ケンヤム

プレイタイムのケンヤムのレビュー・感想・評価

プレイタイム(1967年製作の映画)
4.8
ジャックタチの笑いの対象は、システム社会そのものであり、大衆そのものだ。
システム社会に翻弄される人々をコミカルに見せることで、この世の中を否定し、そして肯定する。
こんな世の中だけど、笑って暮らしていくしかないじゃないか。
という気持ちにさせてくれる。


システム社会の象徴である近代的な高級レストランに、人間を閉じ込め、システム社会そのものの崩壊を描く。
それを目撃する私たちは、笑いながらそれを見ることしかできない。
もしかしたら、それはこの映画に限ったことではなく、現実世界でもそうなのではないだろうか。
私たちは、近代的なシステム社会の崩壊、資本主義社会の崩壊をコメディとして楽しむしかないのかもしれない。

人間が作り出したシステム社会に、人間が振り回されているという事実をコメディと呼ばずなんと呼べばいいのだろう。
近代的な合理的社会で私たちは遊んで暮らすしかないのだと思う。
ジャックタチのような徹底的に冷めた視点で世界を見ながらくすくす笑うしかないのだと思う。
人生は一瞬の夢でしかないのだから。

「仕事なんかするな。今は遊ぶ時間だ。踊ろう。」
このセリフを聞いた時、なんだか泣きそうになった。
ケンヤム

ケンヤム