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ベンジャミン・バトン 数奇な人生のIDEAのレビュー・感想・評価

3.4
序盤、盲目の時計職人ガトー氏のエピソードが語られる。
戦時中多くの若者の命が失われ、彼の息子も例外ではなかった。悲しみの中、彼はただひたすら時計作りに打ち込んだ。
そんな彼が1918年に完成させた駅舎の大時計は"逆回転"。

彼は言う。
「時を戻せば、戦死した若者たちが帰ってくる。彼らは家に戻り働いて家庭を築く。そんな一生を送る。息子も帰ってくる。」

本来なら在ったはずの暖かい未来。
その未来が奪い去られたことへの悲しみ、息子の手を離し見送ったことへの後悔…。
時は戻らない。逆回転の時計はガトー氏の願いそのものであった。

この、『平凡だが得難い日常』こそが今作のテーマであり、我々にも今ある幸せを実感させてくれるような気がするのである。

そして一つの命が生まれ落ちた。
ベンジャミン・バトン。
1918年、第1次世界大戦終結の年であった。
逆回転する時計のように、運命に抗う子。
奇しくも、逆回転の時計が駅舎で披露された同年であった。

逆回転の時計は異質である。
終わりから始まりへと生きるベンジャミンもまた異質。

しかし異質であってもあの時計とは違う。
彼は生きていて、心がある。そしてその心に寄り添い共に歩んでくれる人もいる。
最愛の女性の腕に抱かれて旅立ったベンジャミンの人生は幸福であり、ガトー氏の息子が歩むはずだった人生を、あの時計のように逆回転で歩き抜く。

ベンジャミンの人生はガトー氏の呪いか、はたまた祝福か。
彼と彼の最愛の人との子供は今も幸せに生きている。
これこそが彼の人生の答えであるように思うのである。

あ、イケオジ鑑賞会でした…。
ブラッド・ピットは、今作においてはシブさが足りず。
カッコいいシーンは当然ありますが、イケ『オジ』かと言われると。イケメンですね。

あと、作品が長すぎてぐったりでした。
私の人生も逆回転していただいて、1日に何本も映画を観られていたあの若さを取り戻したい!と思った作品でした。
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