So

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のSoのレビュー・感想・評価

4.0
歳を取るにつれ若返っていく男ベンジャミンと、幼い時に知り合い生涯を通して心で結び合ってきたデイジーとの数奇な運命の物語。
冒頭から死の床にあるデイジーがベンジャミンの自伝を娘に読ませながら懐古し、回想と行き来しながらストーリー自体はベンジャミンのモノローグで進む。

肉体の若さだけが逆行する奇妙な設定以外には、これといって大きな出来事も起こらずスペクタクルもないけれど、それは表面上のストーリー。

彼の人生を追いながら、どんどん美しくなっていくベンジャミン(=ブラピ)は、人の生き死にの無情さ・時間の不可逆性のメタファーであって、永遠などないただ一方向に進み続けていく時の流れの一瞬一瞬の尊さを訴えかけてくる。

どんなに偶然に見えても、ある出来事が一つ起こるには、そこにいたるあらゆる些細な出来事の積み重ねが緻密に重なり合っていることを表現したシーンが素晴らしく秀逸だった。一見不特定多数にみえる人々の日常の一コマ一コマの時の尺が何かの出来事に結実したり、次の不特定多数の一コマ一コマの現実を生み出す。

改めてそんな日常に意識を向けてみると、例えばどんなに愛を貫こうとしても簡単な現実の前に打ち砕かれるという繰り返される人間模様にも、それに打ち勝つチャンスはいくらでも転がっているのにな、と考えたりする。でもそれに抗えないからこそ人の現実はドラマ以上にドラマで、だからこそ映画が生まれるんだけど。

純愛を感じるもよし、今この一瞬の一コマを感じるもよしの、しっとり休日の午後に観たい一本。
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