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雲のむこう、約束の場所のEegikのネタバレレビュー・内容・結末

雲のむこう、約束の場所(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


8月に買ったエロゲをやろうか、この映画をみようか迷ってこっちにしたんだけど、なんのことはない、エロゲでした〜〜〜(ていうか、『ef』序章の発売が2006年だから、キャリア的にもこっちのほうが先なんだ・・・)

よくぞここまでシスヘテロ男の欲望を煮詰めてこんなしょうもない話で90分のアニメを作ろうと思えたなと感心する。こんなしょうもない話を絶対に評価したくない自分と、それでも新海誠の(もはやエモのアイコン/テンプレとして陳腐になった)"画" に、"語り" に、どうしようもなく惹かれてしまう自分とのほこ×たて状態になっている。開始27分までの、中学生時代の甘酸っぱ〜く気恥ずかしいジュブナイル・フィルムで終わっていてSF要素がなければ完璧だった。

男2、女1の同級生3人組、『海がきこえる』じゃ〜〜んとテンション上がったが、エロゲでの「親友」ポジのたくや君は3年後に仕事の同僚のお姉さんとフラグを立ててしまい三角関係にはならない(新海作品に三角関係はない)のでガッカリした。彼もあの子に告って振られるか、逆に成就して寝取られ(広義)るかしてくれたら最高だったんだけどな〜〜(新海作品に三角関係はない)
そういや冒頭に東京の駅のシーンをおいて、そこから主人公が田舎での「あの頃」を回想する──という構成も『海がきこえる』だな。


主人公の男子が高校生になったら青森から東京に引っ越していて、東京の学校で女子と一緒に下校しているくだり(戦車を運ぶ貨物列車が通る線路!)は完全に『秒速』でウケた。とはいえ、『秒速』は都会→田舎→都会なのにたいして、こちらは田舎→都会→田舎なので反転している。

東京に引っ越した理由が「あの塔を見たくなかったから」で、それでも空気が澄んでいるときには東京からでも北海道にある塔が見えてしまう(からそんな日はさげぽよ〜)という設定が良かった。これだけ空や雲や光や空気を丹念に描いていくスタイルが脚本にまで反映されている。やはり新海誠は《距離》を描くのがうまぁい!!!

2時間あった『星を追う子ども』よりはマシだとはいえ、このプロットで90分もかなり冗長には感じた。全体がいくつかの章に分かれていて、その継ぎ目に数秒間の暗転を配置する、という教科書的構成も好きではない。
だから、ここからセカイ系・SF要素を抜いて60分にまとめた『秒速』は神なんですね〜〜〜(秒速の章切り替えも同じようなもんだったかもしれない。見返さなきゃ)

序盤、ヒロインが工場近くの池に落ちそうになって木の板にぶら下がって、板が割れる→主人公が手を掴んで助ける という動作のスピード感・間合いが完璧で、新海誠ってこんな瞬発力のあるシーン作り上手かったっけと思った。

ヒロインが水面を踏むなどして波紋が広がる描写も多かったが、終盤でコーヒーに波紋が広がるのが数回鳴るBGMのピアノの音と完全にシンクロしてたのには笑っちゃった。BGMと東京の風景カットの連続切り替えを合わせる演出もあったりして、AMVの音ハメ文化の源流のひとつを見た気がした。
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