みおこし

ステージドア・キャンティーンのみおこしのレビュー・感想・評価

3.5
第二次世界大戦中にユナイテッド・アーティスツによって作られた、いわゆる愛国心・戦意高揚映画。

”ステージドア・キャンティーン”とはニューヨークに実在したクラブで、兵士たちを鼓舞するためにブロードウェイなどから人気エンターテイナーが来て、パフォーマンスや給仕をしてくれるという夢のような空間。同じくLAにはこれのハリウッドスター・バージョンである"ハリウッド・キャンティーン”も存在していて『ハリウッド玉手箱』という映画で題材にもなったのですが、本作は前者を舞台にした作品になります。

戦地に向かう兵士とキャンティーンの店員との恋物語が一応ストーリーの軸としてあるものの、基本的には豪華なスターたちが次から次へと登場し、パフォーマンスを披露する様子をとらえた内容。ミュージカルというわけではなく、記録映画に近いイメージかと…。
ただ、当時一世を風靡していたスターたちが次から次へと現れるのでそれだけでも一見の価値あり。なんと皆さんノーギャラでの出演だったとか。『オズの魔法使』のレイ・ボルジャー、腹話術師のエドガー・バージェン、個性派俳優のエド・ウィン、スキャンダラスな私生活が話題のタルーラ・バンクヘッド、オスカー女優のヘレン・ヘイズ、ショービズの女王エセル・マーマンなど、ややシアター寄りのメンバー。『ハリウッド玉手箱』と比べると日本での知名度が高くないキャストも多かったのですが、かと思うとキャサリン・ヘプバーンやポール・ムニ、ジョージ・ラフト、マール・オベロンなどクラシック映画ファンならすぐ気付く人も突然登場するのでびっくり(笑)。
さらにあのベニー・グッドマンが "Why Don't You Do Right?"を彼の楽団と演奏するところもあって、それもハイライトの一つ。

とはいえ愛国心高揚映画ではあるので、戦争にまつわる描写もちらほら。なんとソ連の兵士が登場して「彼らはアメリカの味方である」と強調されるシーンもあったりして時代を感じました。冷戦に突入してからはこのシーンはカットになったんだとか…。中国兵とともに「日本を倒そう!」と鼓舞し合うシーンもあって、なんだか日本人としては複雑な思いになりました…。
ハリウッドと第二次世界大戦のつながりが垣間見える、きわめて歴史的に貴重な一本でした。
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