BON

リメンバランス/記憶の高速スキャンのBONのレビュー・感想・評価

4.1
「愚かな男たちのカルチャー・インポ
 最後に頼れるのはむき出しの自分」

デレク・ジャーマンの『ザ・ガーデン』(1994)と双璧を成す作品。

ルパート・エヴェレットに、『ザ・ガーデン』と同様ティルダ・スウィントンを主演に迎えて制作した、イギリス国家やマスコミを批判し、ハイエンドのポストプロダクション技術と視覚的なF/Xを用いてクィアな仮想風景を徹底的に構築した強烈な作品。

25,000ポンドという低予算の助成金を受けて完成させ、同年にベルリン映画祭最優秀テディ・ベア賞、L.A.批評家賞などを受賞。

舞台は世界衛星TVステーションのスタジオと、 モニター上に映されるバーチャル画像の世界。 <嘘の映像>の世界で、主演2人と3人のドラァグクイーンがそれぞれの私的体験<本当の話>を語るというバーチャルな物語。

だが、放送テレビ、アンダーグラウンド映画、ゲイポルノ、ドラッグ&クラブカルチャー、活動家の脱会、MVなどの手法と強烈な差別用語や爆笑を誘う言葉をモンタージュしていて、ストーリーは断片的でデレク・ジャーマンの作品を近未来的にした雰囲気だった。

タイトル通り高速スキャンして進んでいく。痛烈なモノローグを数多く語るティルダ。エイズ、ドラッグ、レイプ、ゲイバッシング、無知、ジェンダーアイデンティティ、人種暴動、SM。

字幕の神代知子さんの日本語訳が本当に切れ味たっぷりで、強烈にセンスのある訳し方でカッコ良い。メイバリーの『愛の悪魔』も神代知子さんと知ってファンになった。マービン・ブラックの手がけたダークで濃密なサウンドトラックが更にカッコ良すぎた。

視覚的に脳味噌を掻き回される感覚で大満足だった。
BON

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