りょう

さんかくのりょうのレビュー・感想・評価

さんかく(2010年製作の映画)
3.2
 吉田恵輔監督の過去作として気になっていました。2016年の「ヒメアノ〜ル」のような残忍な物語ではありませんが、前半のコメディタッチの描写が後半に一転するという構成は、このころからの得意技だったのでしょうか。
 前半はポスタービジュアルとタイトルどおりに姉妹をめぐる三角関係が描かれますが、妹の桃が帰ってしまってからの展開がなかなかいいです。百瀬と佳代とその周辺の何人かの登場人物は、誰も良好な人間関係を維持できず、妙に心地いい不快感を提供してくれます。アパートのトイレの窓のシーンは、不自然なアングルから突如として恐ろしい描写になるあたり、ちょっと難易度の高い演出でした。
 桃の八重歯は小悪魔的な象徴で、小野恵令奈さんのキャスティングはこのためだけだったかのように効果的でした。彼にとっては、その姉である恋人との関係を解消させるほどの破壊力があったということなのでしょう。ちなみに、若い女性の八重歯を“かわいい”と捉える文化は、日本特有のものらしいです。
 終盤に桃が言っていたように、まだ15歳の少女には、30男を惑わせたことすら“わからない”というのが正直な気持ちだと思います。その天然ぶりに惹かれる男性も少なくないのでしょうが、残念ながら現代の日本では法に触れてしまう現実があります。2022年にこの作品を観ると、その視点が不足しているところに違和感がありました。
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