爆裂BOX

聖し血の夜の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

聖し血の夜(1974年製作の映画)
3.9
1950年のクリスマスイヴに町の名士バトラー氏が焼死。遺言でバトラーハウスはそのままの状態で孫のジェフリーに受け継がれるが、20年後、ジェフリーは屋敷を売り出す。売買契約の為町を訪れていた弁護士とその愛人は屋敷に一泊するが何者かに惨殺され…というストーリー。
幽霊屋敷を舞台にしたオカルト物かと思いきやジャーロに近い作品でした。
DVDの画質は最悪で画面は常に傷走っててザラザラしてますが、本作ではそれがプラスに作用してイイ感じの雰囲気を作り出しています。
街の名士たちが謎の人物に電話で呼び出され、次々と殺されていきますが、この殺人シーンがカメラの構図など中々凝っています。まず犠牲者に近づく殺人鬼の主観視点で描いてから殺人シーンでは犠牲者の主観視点に変わり、凶器を振り下ろす殺人鬼のアップに変わるのは面白い手法です。残酷描写も当時としては頑張っているのではないでしょうか。犬の悲鳴からドアの軋む音に入れ替わる所など拘りが垣間見える所が良いですね。
殺人者の主観視点と黒手袋などアメリカ映画ながらジャーロ意識したつくりになっていますね。
劇中流れる「聖しこの夜」も半音下げて不気味で物哀しい調べで効果的です。
殺人鬼の正体もうまく隠しながら進んでいきます。ジェフはあからさまに怪しすぎてミスリードだとすぐ気付きますが。屋敷にまつわる謎、市長達が抱える秘密が徐々に明らかになっていく展開も面白いです。
ただ、後半のネタばらしはかなり強引で無理がありますね。というか、完全に自業自得だし逆恨みでしょう。この回想シーンで描かれる精神病患者たちの脱走シーンはセピア調の画質と患者たちの顔を黒くボカしているのでユラユラ迫って来る様がゾンビのようでかなり不気味です。
最後の最後に登場する殺人鬼の姿は一瞬ながらかなり不気味で怖いです。「何故怖がるんだ」ってそりゃ怖がるだろ(笑)
人物描写も浅いですね。深く描かれる前にバタバタ殺されていきますし(笑)今だったらもっと掘り下げて怪しい側面を描いてミスリードさせるように描くんだろうな。
ツッコミ所も多く、画質も悪くユッタリペースなのでダルく感じられる人もいると思いますが、地味ながら不気味な雰囲気はホラーファンなら楽しめるんじゃないでしょうか。個人的には不思議と飽きずに見られた作品でした。