報復の先に待ち受けているのはさらなる報復
報復は報復しか生み出さない
なぜこれほどまで血で血を洗う復讐をくり返さなければならないのか
わたしたち日本人はどうしてもそこに疑問を抱いてしまう
この物語を理解するためには、まずはキリスト教の成り立ち、紀元前から現在に至るキリスト教とユダヤ教と、そしてイスラム教とを巡る歴史から理解する必要がある
ユダヤ人は救世主としてのイエスキリストを認めていない
ユダヤ教から派生したキリスト教とイスラム教の相克は、今も終わらない
そもそもイエスはユダヤ人だった
イエスはユダヤ教からの圧力と圧政からの解放を訴え、エルサレムの人たちから強い支持を得られたことに、当時、ローマ帝国の属州であったイスラエルの王は激怒し、彼を捕らえ十字架にかけた
このようにキリスト教の発祥はその根本からして非常に血なまぐさい歴史を持つ
その後、カトリックがヨーロッパを席巻し、逆にユダヤ人が長い歴史の中でキリスト教から差別され迫害され続けることとなる
ユダヤ人に対する差別は、第二次世界大戦時のホロコーストでその頂点に達するけれど、今まで長く領土を持たず抵抗するすべを持たなかったユダヤ人は、イスラエルという土地を手にした瞬間、今まで耐え抜いた差別に対する反動からか今度はアラブ人(アラブの主教であるイスラム教もまた、ユダヤ教とキリスト教から派生した宗教であるため)に対する弾圧と迫害にはしる
被差別者は差別するという世の中の構図だ
神道と仏教が人々の生活の中で共存し続けてきた日本人にとって、この相互に混じり合わない宗教観を理解することは非常に難しい
だから、多くの日本人がこの映画を見て報復の連鎖を不思議に思ったり、感情移入ができなくてもしかたのないことだと思う
