ジャック・ターナーの映画監督としての最後の作品は、AIPのポーもの冒険映画。評判の割に悪くないという印象だけど。ターナーのホラー、サスペンスを好きな人には物足りないかもね。この時代のモンスター、冒険映画が好きならば許容範囲といったところでしょう。
謎の生物に攫われたヒロインを追って地下に降りた主人公と相棒の画家。たどり着いた先は古代文明の廃墟たる海底都市だった、という話。
20世紀初頭の怪奇SFの雰囲気は魅力的。特に前半はセットが素晴らしくAIPの低予算冒険映画ということを忘れさせる。いかにも60年代的な照明に照らされた洞窟のセットを進むのが冒険的にワクワク。謎の大渦。謎の神殿も素敵。
そして現れたる悪役はAIPポーもの怪奇の顔ヴィンセント・プライス。なんだけど、ここからすっかり失速してしまう。というのもやっぱり低予算なんで、海底都市をあちこち作るわけにはいかず、狭い部屋が2、3ある程度で同じ部屋ばかりで展開され会話主体になってしまう。窓から見える海底都市の様子はそれなりに興味をそそるけど。陰気なおっさんと陰気な会話では盛り上がらないなあ。
後半になると潜水服を奪っての海底逃走劇となるが、水中なので動きが鈍くそのうえ長く時間を取る。ターナーの監督作とされる「マラソンの戦い」59年の勇猛果敢な海中戦闘シーンとは雲泥の差。評判良くないのも仕方がない部分もあるなあ。
本作の目玉はむしろ部下の半魚人。海藻をつけて水中を泳いでるのはシュール。むしろ序盤に屋敷の暗い中で半魚人っぽいのが見えたという部分は、見えそで見えないターナー的ホラーの良さがあった。
主演はタブ・ハンター。そろそろアイドル的人気も衰えた頃か。相棒の画家をデヴィッド・トムリンソン「メリー・ポピンズ」バンクスさん！飼ってるニワトリ連れての冒険が可笑しい。

【フィルム・ノワール、勝手にベスト50】過去を逃れて

水中での逃走劇がイマイチ盛り上がらない。全員がダイビングスーツを着ているせいで敵味方の区別が付きづらく、動きもノロノロしているためにサスペンスとしても機能しない。