スギノイチ

有りがたうさんのスギノイチのレビュー・感想・評価

有りがたうさん(1936年製作の映画)
4.1
これが『駅馬車』より古いんだからなあ。

「この不景気に、増えるのは赤ん坊ばかりですねえ」
「年頃になると、男の子はルンペン、女の子はひと山いくらで売られていくんですよ」
「峠を越えていった女は滅多に帰ってきやしませんよ」
「この秋になってから、もう八人の娘がこの峠を超えたんだよ。製紙工場へ、紡績工場へ、それから…それから”ほうぼう”へ。俺は葬儀自動車の運転手になった方が、よっぽどいいと思う時があるよ」

台詞だけ抜き出すと、当時の暗い世情が観客にも登場人物にも共有されていることが分かるが、生き生きとした乗客達やロケによって切り取られた当時の情景が活写され、常に映画を明るくする。
見方によっては上原謙の善性は出来すぎていて嘘くさい。
それを桑野通子が中和するが、これがまた絶妙。
スギノイチ

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