英国を代表する実験映画作家、トニー・ヒルによる作品集。
BBC2の深夜番組『一分間映画計画』の目玉として人気を博した作品3本と、国際映画祭の実験賞受賞作など全3本を収録した魅惑のVHS。
◾️車輪の歴史(1992) 1分
紀元前3,000年、人類は車輪を発明した。車輪が段階を経てタイヤに進化していく姿を描く。観客は車輪の1点を軸に風景だけが回転していく様を目を回るように見せつけられる。シンプルな撮影なのに酔いそうになった。
◾️ヴュアーを持つ(1993) 1分
「俺についてきな」とキース・アレンがいうや否や、鉄の棒を担いでよろめきながら疾走する。棒が振り回されると観客は棒の先で振り回されるようか感覚になる…。こちらも目が回るかのような作品。キース・アレンがニコニコしている。
◾️時報映像(1990) 1分
英国の象徴とも言うべきロンドンの大時計台ビッグ・ベンが、文字盤どおりに画面上で時を告げ、時計台を中心に世界が回る。スケールのある映像作品。
◾️ウォーター・ワーク(1987) 11分
88年メルボルン国際映画祭ベスト実験映画賞受賞作品。水中カメラが捉えた人々の水の戯れ。逆回転。波打つ水のキラキラ。屈折した光。空気の輪っか。涼しげで美しく、リピートして観れそう。
◾️拡張映画(1990) 13分
ゴムのように縦横に伸び縮みする映像。ロゴの文字も人間も鍵盤も気持ちよく伸びる。ボディが短い車の赤ちゃんのような可愛い姿も。そして音楽に変貌していく映像。面白い。
◾️ダウンサイド・アップ(1984) 17分
メルボルン国際映画祭ベスト実験映画賞受賞作品。「逆さまの逆さま」映像。カメラが上昇し、円を描いて回転し下降を繰り返す実験映像作品。ピクニックをしている家族などごく普通の光景をとらえながらも、驚きの連続の映像だった。
トニー・ヒルの作品を初めて鑑賞し、実験映像の数々は単純で基本的なトリックを駆使した映像とのことたが、ワクワクするような面白さがあった。