やま

たぶん悪魔がのやまのレビュー・感想・評価

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)
4.3
レビューがたまりにたまっているのだが、
先行して書く。

何年も観たいと思っていた今作品やっと観れた。
ブレッソン映画の中では、やや物足りなくも感じたが、それでも永遠に観ていられる。
画がいちいちカッコいいのである。
無数の椅子にあの人間の配置の美しさ。

いろいろ難しそうなことを語っていたが、
結局のところ"無"なのだと思った。
主人公は自分の生きている世界の矛盾に対しても何も感じない。しかし、性の部分に関しては生まれつきの人間の特性だからなのか抗えずみたいなところなのだろう。
せめてものと、死にどこか期待をしているのだろうと思う。

この映画でいう悪魔のせいで起こる様々な事象は主人公にとっては耳障り。
どうしてこの世界で生きようと執着するのかむしろ謎なのだろう。
女を抱いている方がまだ合理的とかそんなところなのでしょう。


服装が一場面を除いて一切変わらないのが、
本当にこの世界に興味がない象徴だと個人的に思った。


今作品を観て思ったのは、
ブレッソンさんは編集に強いこだわりを持っていると感じた。
彼の特徴である大胆な省略技法もそうであるが、
ドアからドアへの場面展開であったり、人が横切ることによる場面の始まりなど、各場面の冒頭には作為的なモノを感じるし(にも関わらずどの俳優も演技はぶっきらぼう)、音も明らかに調整に調整を重ねている。


あとは、
こうしたいだけなのかもな!と女性を裸にするシーンや警察から身を隠す場面などから、ブレッソン実は面白い人なのかもしれないとちょっと思った。

木がバッタンバタンと倒れる場面はかなり印象的。
ラストの隙間から映画を覗く場面は、何となく映画には希望を感じるというブレッソンのメッセージに感じた。考えすぎですかね。


ブレッソンの映画を観ると無性に映画を作りたくなるが、彼の作風は今の時代には全く受けないだろうなとか思うと、なんだかなぁと思うのである。

それにしても冒頭から炸裂しているが、
歩いてるだけで何故こんなにも最高なのか。
エキストラ?なのか抜けにいる人の足音(コツコツ)だけが響くとか、もうヤバすぎ。

大嫌いな新宿に行った甲斐があった。
やま

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