Jeffrey

たぶん悪魔がのJeffreyのレビュー・感想・評価

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)
4.5
‪「たぶん悪魔が」‬

‪冒頭、河をいく客船。

ペールラシェーズ墓地で青年が自殺。新聞記事、他殺の可能性、物語はその半年前。上流階級の知識人青年、政治的主張、友人の生態学者、環境破壊の問題、恋人、家出、自殺願望、麻薬中毒者、窃盗。今、1発の銃声が響き、2発3発と続き青年が拳銃を手にする…

本作はRブレッソン監督が77年に監督した傑作で、人生2度目の鑑賞したが素晴らしい。

そもそも若者の自殺に追い込むような要素が少なからずあるのはすごく刺激的だ。とは言えR18になったのもそこにあるんじゃないか理由は…。

本作はベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞しているが実際金熊賞を与えてもいい程の傑作だと感じる。

怒涛の如く環境汚染につながる描写が流れる。

工場から出る煙、肥料、飛行機の排出ガス、海への生活排水、森林伐採、巨大タンカーの座礁、小動物の死骸、廃棄物、ゴミの山…と。樹が次から次えとを切られて倒れていく描写は印象的だ。

この映画数年前の白夜の舞台のセーヌ川付近で撮影されているのかロケ地がすごく似ているし、地べたに座って音楽を奏でるのも一緒だ。

青年が拳銃の弾を手のひらに乗せる描写は最高のワンシーンだ。それから下半身のみを映すショットや万引きする手を捉える場面、ミラー越しに映す景色も特徴的だ。

柏の木が大量に伐採されるときに耳を塞ぐシャルルの車内描写やチョコレートをアパートの窓から外へ投げ込み、その道を通過した車に踏まれてぺちゃんこになるシーン等もとても印象的だ。

そして究極的には乗客が"たぶん悪魔だ"と答えた瞬間にバスがブレーキをして衝突の音が鳴り響きカメラがバスの扉を内部から捉えて通りを映した後に音だけが画面外から伝わる演出は正にブレッソンそのものの作品である。

他にも印象的なシーンを挙げるとキリがないがラストの引き金を撃ってからポッケの中にある金をとって暗闇に雲隠れする夜の場面はすごい余韻を残す。

それとブレッソンの作品特有な感覚で言うならばベッドに寝ている男性が起き上がり、ジーパンをはこうとするときにそのジーパンを主人公の青年が両手で持って待機している場面もなかなか風変わりだ。

さて、本作は地球レベルでの環境破壊を問題視する背景をバックにとある新聞記事に青年が自殺したと書かれていたが次のシーンでは他殺の可能性があるとされる。

物語は半年前に戻り、その主人公である上流階級の知的青年シャルルを軸に物語が展開していく。

政治的主張する青年とその仲間たち4人で様々な活動をする、と簡単に言えばそんな感じで主人公のシャルル役のA.モニエが美しいプラチナブロンドのロン毛の少し生意気な感じの風貌が逆にそそられるビジュアルでとても印象的だ。

もともとブレッソンの作品に出演するモデルはみんな美青年や美少女しかいない。

この映画を環境活動家のグレタトゥーンベリに見せてやりたい。

個々の能力と力ではもはや環境破壊には対応できないと言うことを知って欲しい…

本作を通して当時の新左翼と言う物の力が弱まっている事がわかる。冒頭から主人公の青年が死んだ新聞記事で始まる分、我々は物語がどのようなサスペンスで進んでいくか好奇心を持って鑑賞できる。

余談だがこのタイトルの意味合いはやはりカラマーゾフの兄弟の言葉からの引用なのだろうか?‬


‪この監督もわりかし引用が多いが何故かゴダールと違って好きなんだよなぁ。まだ未見の方はぜひお勧めする。孤高の天才を味わえ…‬
Jeffrey

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