鬱屈した日常を送っている銀行員の青年が、祖先のエロ回顧録に取り憑かれてしまう。前衛作家ギヨーム・アポリネールの同名小説（1907年出版）を映像化している、フランス産のソフトコア・ポルノ。

元ネタとなる官能小説は、マルキ・ド・サドを始めとする性愛文学の古典をフォローしている作品。宗教的価値観を度外視した、極めて本能的・動物的な性行動、ひいては自由意志の尊重が、主題として扱われている（よって、発禁本の扱いを受けている）。

幻想世界に侵入した主人公が、ヨーロッパから中国へのセックス旅行を展開。乱交、同性愛、サドマゾ、ペドフィリアといった性倒錯を目の当たりにしていく。「所詮は人間のやることだから」という視点を重視した艶笑コメディが、独特の味わいを生んでいる。

耽美的な映像作り、時代考証無用の前衛アート、美しい女体のライン。完全に"動く春画"の世界であり、枕本（滑稽本）の普遍性を堪能することができる。健康的なエロスを振りまいてくれる女優、マリオン・ゲーム（2023年死去）にサムズアップ。