三樹夫

サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出の三樹夫のレビュー・感想・評価

3.9
州兵が湿地帯での軍事訓練中に姿を現さない敵から襲撃を受けるという、ウォルター・ヒルの骨太っぷりが遺憾なく発揮されている。メタルギアソリッド3が好きな人とかに合う作品であると思う。この作品に出てくるケイジャンは実在する集団で、ルイジアナなどに住み独特のフランス語を話す人々だ。
軍隊版『脱出』とこの映画を捉えることができるのかもしれないが、『脱出』の場合は南部に行っただけでひどい目に合うという理不尽さがあるが、この映画の場合はものすごい自業自得感がある。湿地帯で小隊が訓練中に大きな沼があって、そこを渡るために置いてあったケイジャンのカヌーを、一応メモは残すがはっきり言って無断で借り、運の悪いことにカヌーで沼を横断中に持ち主のケイジャンの猟師が帰ってきてしまった。カヌー借りてる、後で返すんで、メモ置いてるんで読めと大声で叫ぶが通じている様子はない。追い打ちをかけるようにマヌケが空砲をぶっぱなし、ケイジャンの猟師がブチ切れお返しに発砲、軍曹の脳天が吹っ飛ばされる。訓練なので空砲しかなく、勝手に実弾を持ってきていた奴の数少ない弾しか小隊には残されていない中、襲撃を振り切り湿地帯を突っ切って州道への脱出を目指すという燃えるシチュエーションが出来上がる。

ケイジャンに命を狙われるのに自業自得感がある上に、小隊の中でまともな奴は2人ぐらいしかおらず後は頭おかしいのとかクズとかで、簡単には感情移入を許さない硬派な作りとなっている。正直こいつらケイジャンに殺された方がいいんじゃないかという気にさえなってくるほどだ。さらに小隊を率いるのは絵にかいたような無能隊長という殺伐っぷりを見せる。
一応襲撃をされるのだが、襲撃をされる頻度はかなり低く、その代わりにこの映画が何を中心にしているのかというと、小隊が湿地帯をジャバジャバ水に濡れながら彷徨う画である。オープニングで湿地帯をジャバジャバ水に濡れながら歩く様を見せていたのは、この映画の格好いいところはここにあるという宣言だろう。汚れの美学といいますか、小隊が湿地帯を水に濡れながら彷徨う画は格好いいだろ小僧という、ウォルター・ヒルのカッコいいとは、こういうことさ。さらに弾倉に弾を込めるディテールの細かい描写や、撃たれたときに景気よく臓物やら血が飛び散る弾着表現も骨太っぷりを高めている。
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