Ark

幸せなひとりぼっちのArkのレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
4.8
半年前に最愛の妻に先立たれたオーヴェは、寂しくて早く会いたくて何度も自殺しようとするのだが、その度に誰かがやってきて死に損なう。越してきた奥さんと話すうちに心を開いていき、亡き妻と過ごした過去を少しずつ話すようになる。



ネタバレ含みます



オーヴェは気難しいけどお人好しで、とても優しい。妻を心の底から愛していて、死ぬ時には後を追うという約束までした。そして死のうとするのだが、まるで奥さんが「まだ死んじゃダメ」とでも言っているかのように、その度に邪魔が入って死ねなくなる。そして時々奥さんのお墓に会いに行っては近況報告をし、すぐに会いに行くと話す。一途に愛してくれるなんてなんて素敵なの……!

オーヴェの人生が辛すぎる。
幼い頃に母親を亡くし、若くして父親も亡くし、子どもも亡くし、妻は歩けなくなる……。その間に家も燃えてるし、かなり不幸な人生。
でも多分本人は自分のことを「不幸だ」とは思ってないんだろうな。大変な状況を生き抜いてきたから、きっとそんなことを考えてる暇なんてなかったのかも。

近所の人たちがみんな穏やか。ツンツンしてるオーヴェにも寄っていって、何か言われても気にせずまた寄っていって、オーヴェを気にかけている。優しい世界……。

お父さんがオーヴェに向かって走って行って強く抱きしめるシーンにグッときてしまった。ジーンとくる。

ヨーロッパ特有のどんよりした曇り空。
ストーリーも少しどんよりしてるけど、そんなに暗くない。
死にたがってる主人公の話だから私には重く感じたけど、心地の良い重さだった。全体を通して愛に溢れたとても暖かい映画だった。でも寒くて孤独な冬に見ると逆に寂しくなっちゃいそうです。
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