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焼け石に水のYKのレビュー・感想・評価

焼け石に水(2000年製作の映画)
3.5
レオポルドというおじさんが、街で見かけた端麗な青年フランツを家に招き入れ、問答を繰り返しながらやがて2人は同居する。そこへフランツの彼女アナと、レオの元恋人ヴェラがやってきて、恋の難しさと情けなさのようなものが描かれる。4人の登場人物と1つの舞台というシンプルな設定は、戯曲所以の構成なのか、舞台演劇を観る感覚に近い。室内劇、会話劇というのは単調になりがちだが、この作品には、暗いシーンや真面目なシーンにもポップさとチャーミングさがあり、それがオゾン監督独特の感性なんだと感じた。

唯一の舞台であるレオのマンション。それはレオの孤城にして、レオ自身とも言える。彼はフランツのほかにも、若い男を捕まえては自分の城に連れ込んで品定めをしていただろう。一度飲み込まれた者は、二度と彼の城から逃げ出すことができない。フランツだけでなく、アナやヴェラも例外ではなかった。一同は彼の部屋で乱交パーティを繰り広げる。フランツを取り戻しに来たアナでさえ、レオの魅力に取りつかれてしまうのだ。ヴェラは一度レオから離れた存在でありながら、また戻ってきてしまう。おもしろいのは、部屋の玄関は常に開けっ放しだということ。「開いてるから入って」というセリフが表している通り、鍵がかかっていない。にもかかわらず、フランツたちはレオの部屋から出ることができないのだった。
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