デニロ

外事警察 その男に騙されるなのデニロのレビュー・感想・評価

4.0
NHKのドラマで観たのは2009年。国際テロ組織と日本の公安警察の情報戦。緊迫した画面に引き付けられた記憶があった。主人公公安外事4課課長渡部篤郎の不気味な暗躍と、わたしの大好きな尾野真千子が所轄の巡査から何故か公安に引き抜かれ渡部篤郎の非道な所業に右往左往する姿が見ものだった。更に、石田ゆり子が協力者に仕立て上げられ、彼女を運営する尾野真千子、渡辺篤郎の鞘当てにも緊張する。尾野真千子と入れ替わりで警察を退職する片岡礼子が好演していて、彼女の登場場面を楽しみにしたのは初めてです。大陰謀論者は必見。

本作は、2012年に公開された映画版。ドラマ版の暗いトーンを踏襲する画面で緊迫感アリアリ。題材は、朝鮮半島と核。マクガフィンは、東日本大震災後の立ち入り禁止区域内にある大学から流失した軍事流用可能な機密データ、北朝鮮から持ち出された濃縮ウラン。これがウランか、といって素手で触っていた。大丈夫なんだろうか、国際テロリスト。韓国のNISという情報機関、アメリカCIA、そして日本の公安警察。

ドラマでは責任を負わされて公安の裏に転進させられた渡部篤郎は、テロの脅威から日本の国益を守るに余人をもって代えがたいと宰相Aに言われたかどうかわからぬが外事4課に復帰する。そして、北朝鮮工作員の疑いのある男の妻真木よう子を協力者に仕立て上げ、データ、ウランで何をしようとしているのかを探らせる。例によって不気味な笑みを浮かべる渡辺篤郎に操られる協力者真木よう子。協力者といってもかなり危険な役割を負わされていて、ムリというものです。心身ともに壊れてしまうのではないかと思うのだが、なぜかみんな頑張ってしまうのが不思議だ。石田ゆり子などはハニートラップ要員を嬉々としてやっていたし。踏み込んでいくにつれ快楽に変わっていくんだろうかしら。渡部篤郎の真実などどこにあるのだろうか、というのはタイトル通りで、もはやカラカラに乾いた砂漠のような生命体。

高村薫の小説では北朝鮮のスパイは至る所に潜んでいて、ホームレスなどもその一員で重要な役割を与えられていると描かれている。その昔それを友人に話したら、今日公園で弱々しくボール遊びをしていたホームレスを見かけたけれど、彼らは違うと思う、なんて笑っていた。本作や高村薫等の小説を読むと何だか本当にそこら中で謀略戦を行っているように思えてくる。尤もいまだかつてそんな事件が身近で起こったためしもないし、北朝鮮、ソ連・ロシア絡みのしょぼい事件しか覚えていない。CIA絡みは、本作の様になかったことになるんじゃなかろうか。

尾野真千子はドラマ版よりもおとなしくなっており目立たない。当時花の盛りの真木よう子の独壇場だった。やはり渡部篤郎の得体のしれないくねっとした姿が本作には欠かせない。同じ役を怪優大沢たかおが演じるとまた別の不気味さが出るのだろうが、暑苦しそうだ。

2012年製作公開。原案麻生幾。脚本古沢良太 。監督堀切園健太郎 。
デニロ

デニロ