無知を知ってる風。知っているのに出来ない事。
未亡人の家政婦エミとモロッコの外国人労働者アリの結婚を通じてみるヒューマンドラマ。
はじめのうちは好意を寄せ合う二人であったが、年齢、人種、習慣、価値観、様々な困難に直面しながら変わってゆく。
「過去と他人は変えられない」という言葉を体現した映画だった。
好きだったシーンは、オープニング。
アラブ語の音楽と共にドイツの街並みが映し出される。
異色のコラボレーションとでもいうのだろうか。その後の物語をより引き立てていてよかった。
人々の差別はここまで酷いものだったのか!と、純ジャパ(あえてこう呼ぶ。失敬。)の皆さんは思うだろうが、実は現代の日本も大差は無い。
・挨拶よりも先に来る国籍の質問
(→結婚を報告をした時の家族の反応)
・明らかな嫌悪の眼差し
(→映画の随所に映される人々の眼差し)
・好奇心から来る褒め言葉
(→エミがアリの体を友達に触らせるシーン)
私はこんな事を毎日のように経験する。
仕舞いには「嫌なら国に帰れば良い」と吐き捨てられる。
残念なことに、人々の多くは「差別はしてはいけない」という事を知っている。
しかし、異人を前に彼らは逆の行動をする。
知っていても出来ていない事。人間には実にこれが多いのだ。
果たして、エミはアリに優しくなれるのか。
一方アリは、自身の幸せを見つめなおせるのか。