不安は魂を食いつくす/不安と魂の作品情報・感想・評価

「不安は魂を食いつくす/不安と魂」に投稿された感想・評価

テーマは決して軽くないのに、カメラ割りが綺麗でいちいち見入ってしまう。
世界観が好きだった。

44/115
似太郎

似太郎の感想・評価

5.0
ファスビンダー映画の中でも不条理度、悲惨さに於いて頂点を成す傑作。巨匠ダグラス・サークの『天はすべて許し給う』の裏テーマをとことん突き詰め、最後まで報われないラブストーリーに仕上げた手腕はさすが。

元ナチスの清掃婦のおばさんとイスラム人との悲しい恋物語。絶対に成立する筈のない二人の愛の行方は…???

とにかく周囲の家族や友人達から疎まれる清掃婦のおばさんが迫真の名演技を披露している。そこまでやるか!?と言うほど二人を絶望のどん底まで突き落とす、正しくファスビンダー様様といった感じの映画になっている。

廃れた酒場の造形やカラフルな色彩、端正な画角と、人工的かつ無機質な映像世界が繰り広げられる。あゝ無情。この世のロマンチックを根こそぎ取り払ったような殺風景な画面に何らかの「美」を見つけたり。アンチ・ロマン&アンチ・ヒューマニズムを極端にまで拡大させたファスビンダーによる超絶絵巻。
ファスビンダーが撮ったメロドラマ。

歳を取った未亡人の主人公と褐色肌の若者という風変わりな恋愛劇に、移民問題や人種差別も写し出す。

タイトルも良い。
パニック症を患った(今はほぼ完治)ことがある自分としては、突発的に襲ってくる恐怖に怯える日々もキツいが、周囲の人々から自分に向けられる態度の変化や疎外感による不安は、どれだけ必死に耐えてもやがて精神を根っこから折られるような感覚ではないかと思います。

インターネットの匿名性を武器に特定の人を叩くような現代人は、もっと卑怯で残酷です。

インテリアの色使いや扉越しの室外からのフレーミングなど、映像もとても美しく、時折シーンに余韻を持たせるような余白の時間を持たせているのも印象的でした。

ファスビンダー作品の中でもかなり観易い部類に入るのではないでしょうか。

でも「幸せが楽しいとは限らない」
avesmay

avesmayの感想・評価

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ダグラス・サークの悪意的スタイル(褒めてる)よりさらにソリッドなメロドラマ性の活用。ドイツ語ができないのでニュアンスとしての正確性については論じられないのだけれど、Blu-ray版だとアリの台詞の字幕翻訳の片言風の表現がすこし気になった。それはそれとして台詞がとてもよい。「普通の人々」の「悪の凡庸さ」が愛しあう二人を妨げる障害となるが、その障害は必ずしも外圧としてだけ存在するわけではない。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品。
夫を亡くした老齢のエミは、雨宿りで立ち寄ったバーでモロッコ人のアリと出会い・・・という話。

ダグラス・サークに影響を受けたメロドラマ。モロッコ人男性と老齢の女性の恋愛、周りの外国人差別を描く。メロドラマなので、外国人差別のスタンスが大袈裟。
表情の変化があまり無いので、アキ・カウリスマキの作品みたいな印象を受けた。衣服等の色彩はファスビンダーらしく派手目。

字幕が「チンポ故障」「淫乱ババア」等パワーワードがあって笑った。
結婚報告の時のファスビンダーのすかした顔が面白い。
昼寝

昼寝の感想・評価

3.5
差別に晒されながらも愛し合うふたり、で終わらせないファスビンダー。自分たちへの他人の興味なんて所詮こんなもん、共に生きることの方がずっと大変だから、「幸福が楽しいとは限らない」ですね。
ほぼ人畜無害なゴキブリを理不尽にも絶対的な外敵と見なし、できることならその種族ごと根絶して永久の闇に葬り去りたいと日々心の底から願っている人間様が、同じ人間とはいえ異形である他人に対して常に公平且つ誠実な精神を完璧に保てるかと考えてみればそれはあり得ないと俺には断言できるのだが、では罪の無い者だけが石を投げよと言われればそれもまた違うように思う。そこに正当な自覚があれば罪のある者も石を投げていいし、罪があるのに石を投げる者に対してまた第三者が石を投げるのも別にいいと最近は思っている。投げられたら投げ返せばいい。もっと個人的な話をすれば、俺は荒野に立つ著名人に対して岩陰から石を投げているあの連中がゴキブリよりも嫌いなので、一人ずつ見つけ出してその背後から石を投げてみたいと常々思っている。そんな俺もたぶんまた誰かに石を投げられる。話が脱線してしまったが、要は善悪の均衡さえ正しく取れていればそれでいい。ヒトラー級の大怪物がまた生まれない限り、基本的には攻撃と防衛の混沌が産み落とす恩恵も存在するし、外部からの圧力、それに対する結束によってのみ成就する愛もある。悪があるから善があるように、地獄があるから天国の一片がある。必ずしも「幸福が楽しいとは限らない」のである。でもやっぱり、お互いにもうちょっとやさしくなりましょう。でないと生きる意味がない。不自然にまで組み立てられた空間と色彩に目を向けて恍惚としましょう。分かりやすく通俗的な物語を欺瞞と捉えるよりも、素直に愛の可能性を歓ぶほうが人生は楽しいでしょう。そんな感じの作品じゃないかな、たぶん
ファスビンダーは初めて見ました。

隅から隅までたっぷり内容の詰まった映画でした。私の大学の専攻柄、こーゆー問題はよく取り上げられますが、映画にしちゃうとどうもシリアスになりすぎるんですよね。そこの塩梅がすごく上手な作品でした。カウリスマキの映画と雰囲気が似てました。
shaw

shawの感想・評価

4.4
スーツ姿のアリがどう見ても『TENET』の主人公... 笑

前に見たファスビンダー二作に比べれば良くも悪くもインパクトに欠けるけど、設定は結構新鮮。

ダグラス・サーク映画に惚れたファスビンダーが、ある程度大衆受けするご都合主義な映画があっても良いと知って、作った作品の一つ。

たしかにメロドラマらしく、やけに暑苦しいセリフやわかりやすい演出が続く映画なんだけど、この監督の凄いのは人からの影響を完全に自分のものにするところ。

独特の間合いと、いつも通りの超濃いー顔のキャスト陣がいい味出してる。公園でのシーンはやっぱり少し泣いちゃった。

ラストも完璧。元々のバッドエンドから少し改変を加えたようで、その調整具合が絶妙。
ドイツ人の掃除婦とモロッコ青年の出会い
悪ふざけで声を掛けさせられて踊ったダンス
親切心は愛情に変化し、その気持ちは抑えられない。
2周り以上、息子達と同じ位かそれより年下の有色人種の男性
同僚や隣人、血の繋がりがある子供からの視線、嫌悪感、あからさまな嫌がらせ
ただただ愛し合っていただけなのに、他人の視線が気になって、荒んで、歪んで。
逃避行から帰ってきたら全て上手くいく、なんて夢みたいな現実
愛さえあれば…と思う一方ですごいカップルだなって思う。
私が娘ならやっぱり反対するだろうし…
結局皆自分が一番可愛くて、上手い事いけば何でもいいんや。
幸せそうだったけどこれが最良の選択だったのかは晩年に分かりそう。
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