胃潰瘍のサンタ

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

4.2
三島由紀夫を描く時はあんなに映像スカスカだったのに、こっちはもうパワフルったらない。やはり監督の思い入れが違うらしい。

この時代のデジタルカメラの安い質感と棒読みの役者陣が、ざわついた時代の空気感を肌で伝えてくる。『仁義なき戦い』みたいな前半は、集団抗争劇が好きな者には堪らない。

しかし分かっていたことだが、中盤からは心理劇に転じ、日本史上最悪の集団ヒステリーを描く。
これがとにかく目を背けたい。空っぽの理想と同調圧力が生むリンチは、彼らが嫌う旧日本軍の「歯を食いしばれ!」と大して変わりがない。まあ救いと同じぐらい死んで行く人物に思い入れもないのだが、次元が違うだけでこんな感じの圧力はどこにでもある。主犯の二人はいじめっ子みたいなものだし、人を詰ることがだんだん気持ち良くなっちゃってるんだろうなというのが分かる演技。

あさま山荘に立て籠もった者たちは、「彼らなりに必死だった」というより、「それしかない」と考えるしかなかったんだろう。仲間を殺してまでこだわった後では、今更後に引けないじゃないか、と。やっぱり日本軍と同じ発想だ。

3時間はさすがに長く感じたものの、一つの歴史映画としてなかなかの満足度。ちゃんと客観的な作品になっていると思う。
まあ一点だけ難癖をつけるなら、学生側や民間人の死者を強調する割に、成田やあさま山荘で警察官に犠牲が出ていることにはほとんど触れていない(最後のテロップぐらい)。