ぶみ

黒部の太陽のぶみのレビュー・感想・評価

黒部の太陽(1968年製作の映画)
3.5
木本正次が上梓した同名小説を、熊井啓監督、三船敏郎、石原裕次郎等の共演により映像化したドラマ。
黒部ダム建設に尽力した人々の姿を描く。
発電所建設の主体である関西電力の現場責任者を三船、発注を受けた熊谷組の設計技師を石原という二大スターが演じているほか、下川辰平、下條正巳、大滝秀治、宇野重吉、二谷英明、高峰三枝子を始めとした昭和を代表する錚々たるメンバーが集結。
物語は、前述のような関西電力や熊谷組、間組、佐藤工業、大成建設といった実在の企業名が登場し、破砕帯に行く手を阻まれるトンネル工事を中心として展開していくため、まるで再現ドキュメンタリーを見ているかのよう。
当然のことながら、VFXやCG夜明け前の時代の作品となるが、セットを組んでの映像は、最新作品にはない本物であるが故の迫力に圧倒されるものとなっている。
そのトンネル工事を中心に、家族ドラマや発注者と受託者のせめぎ合い、労働者の気概といった様々な要素がバランス良く詰め込まれているため、三時間を超える長尺でありながら、不思議と飽きることはない。
また、宇野重吉と寺尾聰親子が、作品の中でも親子を演じていたのは見逃せないポイント。
他にも「オールドミス」や「サラリーが安い」といった死語や、客人に対して娘にお酌をさせるシーンがあったり、はたまたボンネットトラックが登場したりと、昭和の当たり前の光景を描き出した記録映像としても面白い。
観光地としても有名で、私も行ったことのある黒部ダムのトンネル工事を、時代が持つ熱量そのままに描き出したインターミッションありの大作。

風だ、黒部の風だ。
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