わきお

黒部の太陽のわきおのレビュー・感想・評価

黒部の太陽(1968年製作の映画)
3.8
■破格のスケールで描く「プロジェクトX」

世紀の難工事と呼ばれた黒部ダム建設に文字通り命を賭ける男たちのドラマ。三船敏郎×石原裕次郎による大スター同士の共演もポイント。

ダムの完工からわずか3年後の公開という点にまず驚き。それだけ日本史のマイルストーンになりうる出来事であったと当時も認識があったのだろう。

171人もの殉職者を出した無謀とも言えるこの工事は、なんと言っても「破砕帯」との戦いの迫力が凄い。3時間を超える超大作のため、インターミッションが入るのだが、そのタイミングがまさに破砕帯にぶち当たった瞬間。後半待ち受ける「怪物」との戦いを前に、当時劇場で鑑賞した人は特に興奮を抑えられなかったであろう。

ドラマパートは少し感傷的すぎる気がしたが、三船と裕次郎の演技には引き込まれるものがあった。特に、現場監督として苦心してきた裕次郎と工員との間に深い溝が開いていたことを突きつけられるシーンで見せた深い落胆の表情が印象深い。

度々現れる「戦後」というワードから伝わるように、戦後復興の電力に多大な貢献をしたマスターピースということもあり、尋常ではない熱量を感じられる傑作と言えるでしょう。
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