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飢餓海峡のクリームのレビュー・感想・評価

飢餓海峡(1965年製作の映画)
3.9
正直内容は、そんなに響かなかったけど、貴重な時代背景が描かれていて面白かったです。八重の変わった愛情がインパクト大でした。
貧困ゆえに運命に翻弄される男と女、そして罪。日本社会の底辺部の戦後史を背景にドラマありサスペンスありの物語。
ある台風の日に北海道で起こった質店放火·強盗·殺人事件。そして、それから10年後に起こった殺人事件。二つの事件がある女を接点に繋がっていく。




ネタバレ↓




1947年、網走刑務所を出所した二人の囚人が起こした強盗殺人事件に巻き込まれた多吉。台風のどさくさに紛れ船で逃亡を図るのだが、船上で囚人の一人がもう一人と多吉を殺そうする。しかし、結局多吉だけが大金と共に生き残った。
その後、八重の所に泊まった日に多吉はお代の50円とは別に34,000円を新聞紙に包んで八重に渡す。八重は多吉に感謝し、このお金で借金を返し東京へ行く。この時たった一度しか会っていない多吉を好きになった八重は、残りのお金と共に多吉の足の親指のデカイ爪を大切に持ち歩く。そして、たまにそれを出しては、多吉を思い出し妄想に悶える。これは、さすがに何が起きたのか?面喰らった。男の足の爪で悶えるって、どういう思考回路なのか?絶対、臭いよな?理解なんて出来ません。
八重は、人から助けて貰ったのは、初めてだったのでしょうね。大金=優しさと勘違いしたのかも?
そして、夢にまで見た多吉が樽見と名前を変えて新聞に載っていた。八重は、樽見に会いに行く。ただお礼が言いたかったのと本当に多吉に恋をしていた(疑似恋愛?)ので、どうしても会いたかったのだろう。多吉は、あの時あのお金が後ろめたく人助けに使って自分の気持ちを少し楽にしたかっただけだと思うが…。
一方、多吉にしてみれば、忘れたい過去の自分を10年も探していた女。色々、考えた挙げ句、衝動的に殺してしまう。目撃者の書生の竹中も同じ様に我が身を守る為に殺してしまう。2度目の殺人だからか、躊躇なく2人を殺した。
船の上で弓坂が、八重の魂を鎮めようと花束を海に投げます。続けて多吉にも花を渡すと、彼はそのまま花と一緒に海に身を投げてしまうのだった。
確かに予測していなかったので、ラストは、強烈だった。それでもやっぱり、爪で悶える女の方がインパクトが強かった。
1人は貧しくても罪は犯さず、1人は生きる為の罪は必要悪。そしてどちらにも生き辛い時代だったと…。でも多吉は、悪い奴だよね。結局、悪が勝つスタイルは嫌いじゃないけど、多吉を良い奴風に描くのは違う気がした。
後は、上野駅の看板が手書きで、駅という漢字が旧漢字だったり、勾留されたのが、木の牢屋だったのは、時代背景が見えて良かった。トータルでは、面白かったのですよ。
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