青眼の白龍

飢餓海峡の青眼の白龍のネタバレレビュー・内容・結末

飢餓海峡(1965年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

 邦画史上の傑作と名高い、三國連太郎主演の社会派サスペンス映画。強盗放火の罪を犯して逃走していた三人組は、函館連絡船の沈没事故に遭遇する。三人組のひとり・犬飼は単独で津軽海峡を渡り青森県大湊にたどり着いた。そこで犬飼は娼婦の八重から親切を受け、彼女に大金を与えて姿を消してしまう。同じ頃、函館署の弓坂刑事は沈没事故現場で発見された身元不明の遺体が強盗放火犯二名のものであることに気づく。生存者の犬飼を追う弓坂だったが、事件は手がかりを掴めぬまま迷宮入りとなる。それから十年後、東京で娼婦を続けていた八重は新聞記事に犬飼の写真を発見する。彼は樽見と名前を変え、慈善家として成功を収めていた。過去の礼を言うため舞鶴へ向かった八重だったが、彼女を待ち受けていたのは残酷な運命であった……

「犯罪者と慈善家」の二面性を持つ犬飼多吉という男をめぐる謎が、十年の時を経て紐解かれるミステリー。本作では北海道と本土、過去と現在、男と女の心理的隔たりなど、様々な断絶が“海峡”として描き出されている。留置場で犬飼と弓坂が対峙するシーンは屈指の名場面だ。
 実直に事件と向き合おうとする味村刑事を演じたのは若き日の高倉健。全てを犠牲にして犬飼を追う老刑事・弓坂を伴淳三郎が、十年も犬飼を愛し続けた悲劇の娼婦・八重を左幸子が演じている。だが、なんといっても一人二役に近い犬飼の変貌を演じきった三國連太郎が素晴らしい。後世に残したい傑作である。