美術展との連動企画上映にて。
ファッション界を成り上っていくカタルシスにはまったく目を向けず、「女」として規定されることへの抑圧にフォーカスしている味わいが意外な作品だった。
シャネルは青年期をベルエポックど真ん中時代に過ごしている。そんな狂乱の時代に独りだけコルセットを捨て、男が着るものとされていたジャージー素材、黒、ズボンなどを軽やかに纏う様はクール。でもあるし、そう装わないと自分を失ってしまいそうだった彼女の苦悩は非常に重苦しく描かれていた。
ファッションショーで万雷の拍手を受けるシャネルのクロースアップがラストカットとなっているが、彼女は決して手放しに喜んでいるようには見えない。自分の道程を振り返り、どこか哀しい目をしているように、私には見えた。