Nella

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップのNellaのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

随分前に見たので記憶が曖昧だけど、「他人を小バカにした不愉快な映画」という印象だった。しかしこの映画の白眉というか特筆すべき点、それはOBEYこと若かりしシェパート・フェアリーがめっちゃ写ってるってとこ。この人が字幕付きでこんなに喋る場面は珍しいし、イケメンなので思いがけず目の保養にもなってありがたかった。
内容的にはフェイクドキュメンタリーとしての目新しさも特にない、現代美術のエースが作ったわりには凡作だった。これはSNSで見かけた意見の完全な受け売りなんだけど、バンクシーは非常に広告的な戦略が上手い。その時点で「商業主義を打倒してやる」みたいな気概は全然なく、むしろ商業主義に阿ってパトロンを捕まえるのが上手いんじゃないか。秘密主義で「一部の先鋭的な人だけ」が正体を知ってるとか、選民意識をくすぐって金を引き出させるのが上手く、強いて言えば商業主義をおちょくってるんだと思う。マッシブ・アタックのロバート・デル・ナジャだというのが随分早くから知れていたのもある意味戦略だと思う、ラジオ番組にバンクシーとして出た時にMCがおもっきり「ボブ」って呼んじゃってバレたらしいけど、そんな厳密に隠してもないのよ。
作品から際立ったメッセージ性とかも特に(彼らの音楽ほどには)感じたことがない。現代美術って名前が売れてから何を主張するかは結構大事だと思うんだけど、オークションでやったこととかも結局大筋の主張はコマーシャリズムに対する皮肉だし、なんかそればっかりって感じで。あまり詳しくはないんだけどメキシコの方がストリートアートは凄いんじゃない。やっぱり体制に阿った芸術は芸術というより「広告」だし、広告としてはこの映画はある程度機能したんじゃないかと思う。

まぁでも前述した通り貴重なシェパード・フェアリーの映像のおかげで、この凡庸さもあまり気にならず最後まで見ることができます。

追記・例のネズミの絵の話

10年以上前のこの映画に思いっきり映ってるので、「最近日本人が描いた」というのは捏造でしょう。何のつもりでそんな嘘をつくのかは知らないけど…。我々日本人はロクな美術史教育を受けないため、現代アートと言えば岡本太郎のような原色使いに毛の生えたようなものだと思っているが、山田五郎さんによれば「現代アートは一見デタラメに感じられるが、デタラメにも歴史があり、その文脈に沿ったものが世界では評価されている」との事。確かにリヒターやポロック、大竹伸朗などもドリッピングやコラージュが多く、そういう表現が流行なのかと思ってたけど、ちゃんと文脈があると。そもそも進化した抽象表現なのだしね。
コラージュやパロディのように著作権的に際どい表現もあるので、美術に興味がない人は、「現代アートはフリー素材」だと思い込みがちなのかもね。バズり目的にフリー素材使って何が悪いという認識なのでしょう。無教養ここに極まれりという感じで実に嘆かわしいですね
Nella

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