Jeffrey

火事だよ!カワイ子ちゃんのJeffreyのレビュー・感想・評価

火事だよ!カワイ子ちゃん(1967年製作の映画)
3.8
「火事だよ!カワイ子ちゃん」

冒頭、とある田舎町。消防署長の退任を記念したダンスパーティー。最大のイベントはミス消防士を選ぶコンテスト。様々な景品、小火騒ぎから大火事へ。パニック、泥棒。今、些細な事件が混乱と大惨事を引き起こしていく…本作はミロス・フォアマンが1967年に監督したチェコスロバキア・イタリア合作のシニカルなドタバタ喜劇で、この度DVDボックスを購入して初鑑賞したが面白い。本作はスラップスティックな社会風刺でチェコでは上映禁止騒動にまで発展したアナーキーな喜劇映画として有名である。この作品はどうやらTSUTAYAにもレンタルされているようなので、気になった方はぜひ見てみるといいかもしれない。


さて、物語はとある田舎町で行われる、消防署長の退任を記念したダンスパーティーが大々的に開催している。最大のイベントは、会場からミス消防署を選ぶ美人コンテストと、様々な景品が当たる抽選会だ。しかしパーティーが始まる前から、景品のケーキが消えたり、言い争いをしているうちに火事が起こったりと、スムーズに事は運ばないのである。そうした中、いよいよ始まってしまったパーティーでは、コンテストに興味津々の消防士たちが真剣にコンテストの候補者探しを始める。だが、邪魔が入ったり勝手なことを言い出したりで、高齢の前消防署長は置いてきぼりに(そっちのけ)。一方では、会場脇に置いてあった景品のコニャックやデザートが消えてしまう。些細な事件が混乱と大惨事を引き起こし、大宴会は狂騒と化していく。破綻と混乱が渦巻く宴の果てに待ち受けるものとは…そしてミス消防士の栄冠は誰のものになるのか…。


本作は冒頭に、数人の男性が年代物の斧のようなものを見ながら話をしている。どうやら消防署長に対しての贈り物のようだ。カットが変わり、ミスコンテストの準備をしている会場へと移り変わる。そこには数多くの商品が陳列されている。その中で空っぽになってるケーキ皿を見て、ある男がその会場にいた男を疑い始める。だが、その男は私は知らないと言う。そして喧嘩をしている最中に、垂れ幕を天井につけていたハシゴに乗っている男のハシゴが倒れてしまい、男は宙づりになり助けてくれと言う。その場にいた3人の老人はその垂れ幕に火が移ったことに気づき、消化器のようなものでその火を消そうとするが、一向に消化器が作動しない。一方で、その男は助けを呼んでいるのにも関わらず、その老人達は一向にぶら下がっている、その男を救助しようとしない。そしてオープニングが静止画で始まる。

続いて、パーティー会場へと移る。そこには様々な老若男女が揃っている。老いた消防士たちはパンフレットでミス消防士の女性たちを眺めながらレベルが違うなどと色々と個人評価をしている。そんな中、先程の男がケーキに続き今度はコニャックがなくなっているぞと会場のテーブルに座ってる女性に文句をつける。男はお前が目を離したから悪いんだと言いわ2人は言い争いになる。カットは変わり、消防士たちが美女たちに対して論議をしている。

そんで今度はソーセージがない、チョコレートケーキがないと騒ぎになる。一方で他の消防士は女の胸がここからじゃ見えにくいから上に上がって見下ろそうと言い、色々と試行錯誤する。そして男たちは会場にいたブロンドの美人の女性に声をかけて"あなたは綺麗だからぜひともミス消防士に出演してくれないか"と頼む。 1人の男は自分の娘をミスコンテストに入れてくれと頼む。それを拒否るとしつこく懇願するのである。

続いて、カメラは真珠のネックレスを切ってしまい、その玉が床に落ちてそれを拾っている女性のお尻を覗き見る若い青年をとらえる。青年はテーブルの下に入りその女性にちょっかいを出すが、女はあっちに行ってとあしらう。やがて、ミス消防士に出てくれないかと頼み込む1人の女性の彼氏のような人が現れて、そこで大騒ぎになり始める…と簡単に説明するとこんな感じで、


いゃ〜、コレはチェコヌーヴェルヴァーグ時代のお笑いに満ちた傑作コメディーだろう。 ‪だって、オープニングからばかばかしい喧嘩で始まり、はしごが倒れてしまって宙づりになっている男が必死に助けを呼んでいるのに、のんきに使えない消化器を一生懸命作動させようとしている老人たちがその救助を無視する場面とかブラック過ぎるだろう。

自分の娘が選ばれて喜んでいる母親が審査員の消防士たちがいる部屋から出て行かないので、なかなかうまく事が運ばなくて、モヤモヤしながら途中までやっていたが、ついに耐えきれずにそのおばちゃんを1人の老人消防士がダンスに誘って追い出す場面とか笑える。そんで水着を持参して途中からやってきた女が洋服を脱ぎ始め、それをそのまま脱がせて眺める破廉恥な老人たちも面白い。ポージングまでさせる始末だ。

この映画くそ笑えるところがあって、火事が起こってしまい、来客者がみんな外に逃げ出すのにボーイの男が皆さん分別ある行動してください。お会計は必ず払ってください。そこのあなたは何を飲みましたか?などを聞くところとかズレまくってて笑える。そんで最終的に何を飲みましたかって男の人に聞いて、その人がレモネードと言うとその金額を提示して払ってくださいと言う始末…爆笑だよね。

それと自分の家が火事で全焼していて、寝巻姿のその老人が雪の中寒いんじゃないかと思い、助けた男たちが火のそばに近づけようと言うこの皮肉な状況も笑ってしまうよ。それとその可哀想な老人にパーティーの抽選券をかき集め、老人に渡すのだが、老人は私は抽選券みたいな紙ペラは欲しくないお金が必要なんだと言う件も面白いし、何よりもこの騒ぎの中で景品がほとんど盗まれてしまい、これから照明を消すからその間に景品をテーブルの上に戻してくれと言う場面で、暗くなってみんな会場にいる人が騒ぎ始めて、電気をつけた瞬間まだ残っていた景品が全てなくなるオチは大爆笑。

そんで引退する老人消防署長に送られるはずの品物が…あっ、これを言ってしまうとネタバレになるからやめよう。とにかくこの作品何パターンかのオチが非常に笑えるのだ。それは火事で家をなくしてしまった老人の最後のオチも悲しく笑える。そしてこの作品は幕を閉じるのである。いゃ〜こんなに社会を馬鹿にして批判した映画もないだろう。どうやら共産党は勘違いをしたらしくて、共産党批判だと思い上映を禁止したようだが、この作品は北ボヘミアの街で偶然消防士たちのパーティーに行った際の体験に基づいて作っているため、そういった二重の意味合いが含んでいる作風ではないと監督は言っている。

そもそもフォアマンが長編第3作目として選んだこの作品は米国に拠点を移す前の最後の作品である事は周知の通りであり、これが最後の彼の渾身の一撃だったのかもしれない。かなりの出来であると思う。残念なのは、この作品が共産党批判したと言うことで非難を浴びてしまい、様々な仕事柄が破綻してしまったと言う事実だ。だが、この作品を当時のクロード・ベリとフランソワ・トリュフォーが気に入ったらしく、フォアマンの望むような形で映画を作ってみないかと誘われて彼の傑作である「パパ/ずれてるゥ!」ご出来たとのことだ。

最後に、この映画ミスコンテスト(消防士の)と言う割には正直可愛い女の子は誰1人いなかったと思われる(個人の意見です)。
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