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突撃のmotoietchikaのレビュー・感想・評価

突撃(1957年製作の映画)
3.8
第一次世界大戦中の、仏独が舞台。二国間の戦線は膠着状態に陥り、双方ともに消耗するだけの軍を描き、そしてまた上層部では欺瞞の横行する政治的駆け引きがなされ、責任のない下っ端が処刑されていく……。

『突撃』というタイトルだけど、銃砲飛び交う場面はそこまで多くない。『フルメタル・ジャケット』ではかなりドンパチしていたけど、本作はどちらかと言えばカーク・ダグラス演ずる歩兵連隊の隊長が部下を守るため誠実さを貫こうとしつつ、汚職まみれの上司の反感を買っていくみたいな筋で、身を引き裂かれるような彼の葛藤を中心に描いている。

それでもやはり序盤の見所は苛烈な戦線の描写。じりじり匍匐前進している場面だけでドキドキする。この映画の少し前に撮られた『恐怖と欲望』という作品でも戦線の緊張感みたいなものをえぐるように描いていて、とても良かったのを思い出した。
『野火』のような生々しい表現もまたある種の真実を映していると思うが、屍の山が淡々と積み上げられていくような『突撃』のそれもまた真実なのだろう。

だんだん悲しみを帯びていくカーク・ダグラスの演技がいい。モノクロの陰影も美しい。
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