全てのアメリカ文学はハックフィンに通ずると言わしめた名作の映画化。主演は指輪物語のイライジャ・ウッド、制作はディズニーという豪華さ。原作ラストで水を差すように登場するお調子者トム・ソーヤーを消し、その役割をハックに当てたことで物語が一貫して重いテーマから逃げずに向き合うような構成に改善されていた。奴隷であるジムを逃がすべきか、それとも持ち主に返すべきか。南北戦争前の南部の常識から言えば、返すのが良心に従った正しい行為であるが、ハックはジムとの冒険を通して自分なりの決断を下す。( 「よろしい、ぢゃあ、俺は地獄へ行かう」で有名)しかし、そこに到達するまでの描き方が素晴らしい。途中、南部の名家の元を訪れたハックとジムだが、ジムは奴隷として肉体労働を強いられることになる。ハックは旅の疲れもあって、自分を快く迎えてくれる人々の元にしばらくいたいと言いだし、逃げようというジムのことを自分勝手だと非難する。しかし、彼が鞭打たれ血を流している光景を見たハックは心から反省し、彼に謝罪するのである。ここからハックの価値観は変わり、最後は命をかけてジムを自由にしようとする。ジムとハックのお互いを想う気持ちが表れたこのクライマックスは涙腺崩壊である。
アメリカ文学の最重要作品と言われた本作を映画で気軽に履修できるのは凄いことなので、ぜひ見てほしい。