OASIS

ピアノの森のOASISのレビュー・感想・評価

ピアノの森(2007年製作の映画)
2.8
「ピアノの森」で育った少年カイとピアノコンクールに何度も出場する程の腕を持った少年修平との友情を描いた漫画原作のアニメ映画。

原作は未読。
森に捨てられたピアノを唯一弾ける事が出来る少年カイはファンタジー的な存在なのかと予想していたが全くそんな事はなかった。

裕福な家庭に生まれた修平は毎日の努力の積み重ねによってその腕を手に入れるが、一方のカイは貧乏な暮らしの中森でピアノを弾いている内に自分でも気付かない内に天賦の才を身につけてしまう。
修平はカイと友情を深めれば深めるほど、憧れや羨望、嫉妬に近い感情に悩まされ、更にカイは修平が信頼していた元プロのピアニストにまで認められる。

与えられた曲を楽譜通りに引くことは正しいが、それが人の心を動かすには至らない。
自分かいくら努力しても辿り着けない領域にいるカイに対して複雑な感情を抱きつつも、その腕を認めざるという修平の立ち位置はさながら「アマデウス」のサリエリの様だった。

コンクールに出る事になったカイはそこで修平にライバル心を燃やす少女と出会い冷静に弾ける様になるアドバイスをするのだが、いきなり出てきたその少女にスポットが当たり始めて、それが結構な割合を占めていたりするのでおかしなバランスだと思った。
二人だけの物語に割って入ってくる割りに魅力的でも無い。
その少女が成長して同じく大きくなった二人と恋に落ちるという様な漫画的展開があったとしても、この映画は少年期だけで終わってしまうので、特に登場に意味が見出せなかった。

声優に関しては、神木隆之介はもちろん宮迫博之の意外な上手さに驚いたが、上戸彩だけは少年の声とはミスマッチに感じた。
演奏時の作画は抜群に良くて、特に指の動きが異常なくらい繊細に表現されているので、音楽と合わせて見た目にも耳にも響き渡る演奏シーンになっている。

その演奏は必聴だと思うし映像も綺麗なんだけど、少年期だけで終わらせてしまうのは惜しい。
これはやはり原作を読むのが正解なんだろうか。
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