青山

陽は昇るの青山のレビュー・感想・評価

陽は昇る(1939年製作の映画)
3.6

とあるアパートの最上階の部屋で銃声が鳴り響き、螺旋階段を転げ落ちていく死体。犯人の男フランソワは部屋に立て篭もり回想する。フランソワーズという女との恋、そしてヴァランタンという男を殺すことになった顛末を......。


『天井桟敷の人々』からの流れでマルセル・カルネ監督作。
天井桟敷に比べて90分と半分以下の長さの本作ですが、正直こっちのが長く感じた......。

冒頭で殺人のシーンがあり、螺旋階段を上から写すシーン(映画でよく観るけど本作が最初なんかな?もっと前からある?勉強不足でわからん)があって、見上げていた大勢の野次馬たちが主人公の威嚇射撃の銃声を聞いて蜘蛛の子を散らすようにサァッと自室に引っ込むとこなんか映像カッコ良すぎておおっ!て言っちゃった。

ただ、そんな冒頭とラストシーンが最高なんだけどその間は正直そんなにで......。
お互いに施設育ちで名前の似ているフランソワとフランソワーズの恋......という運命的かつ(フランソワの立て篭もりから始まるせいで)刹那的なラブストーリーは好みなはずなんですが、お互い別の相手がいるみたいな四角関係がなんか鬱陶しく感じてしまって......。
また、ところどころで立て籠ってる現在がカットバックしてくるわりに全体にはメロドラマで緊迫感に欠けるってのもあります。

そんでも、フランソワとフランソワーズの2人がテディベアを挟んでまるで家族写真のように並んでいるのを鏡越しに映すことで、家族に憧れつつも彼らにこんな幸せが訪れないことを暗示させるところとかも「おおっ!」って思ったし、そういう映像の工夫が随所にあるのでストーリーの好きになれなさとは別に観ていて気持ちいいところは多かったです。ヒロインの家の近くの夜の路地の風景とかも良かったなぁ。
また、もちろんあのラストシーンはとても印象的で素晴らしかった。序盤からタバコを吸うシーンが多くて、モノクロ映画の中のタバコの煙ってのはそれだけで素敵なんですけど、それがラストのここに掛かって来るのか!という暗示の仕方もカッコいいよね。

......て感じで、中身はそんなに好きじゃないけど最初と最後がめちゃ良いし演出はいちいちカッコよくてなんだかんだ良かった気がしてきました。
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