OASIS

フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ブルース・リー主演の「怒りの鉄拳」をジェット・リー主演でリメイクした作品。
監督は「メダリオン」等のゴードン・チャン。

上海から日本の大学へとやって来た青年チャンジャンは、出身道場である精武館の師匠・ホンが右翼団体である黒龍会の芥川の手によって殺されたと知る。
冒頭からかなり反日色が強く、教室に乱入して来た日本人をジェット・リーが表情を変えず残忍な方法でぶちのめしていく様は冷徹で恐怖すら感じる。
ただ、恋人の光子から「日本人を恨んでいるの?」と聞かれ「わからない。強いて言うならこんな時代を憎んでいる」と曖昧な答えをしている辺り、主人公の中では比較的反日感情が薄いのだろうと思わせる。

精武館に戻ったチャンジャンは、芥川の居る虹口道場に乗り込む。
動き辛そうなぴっちりとした真っ黒の学生服でも華麗に生徒達を薙ぎ倒して行く絵面はシュールながらも格好良く、終始表情を変えない落ち着き払った佇まいも渋い。
ただ、芥川の実力を試す為勝負を挑んだもののホンを倒せるほどの腕前では無いと判断したチャンジャンが、執拗に顔を至近距離に近付けて挑発する行為を繰り返す様が面白過ぎてドリフのコントみたいだった。

ホンは試合直前に毒を盛られており、それが日本軍の長官・藤田の謀略だと判明し信用を無くした芥川も始末されてしまう。
背骨を折られるという芥川の殺され方のエグさに笑ってしまったが、終始悪役を貫き通す藤田の悪辣さの表現と一筋縄では行かない強さを表す場面としてはインパクトがあった。
精武館に乗り込んで来んで来た日本軍によって、チャンジャンは芥川を殺した容疑者にされてしまう。
そこへ証人として現れる光子。
「彼と一晩中一緒にいたわ」と大胆な発言をして周囲を引かせ、裁判官からも「何だこの茶番は」と馬鹿にされる。
確かに茶番感は強かったが、誰もが思っていただろうことを思わず吐き出してしまった裁判官に笑ってしまった。

時期精武館の館長の座を賭けて戦う事になった同志のチャンジャンとティンヤン。
余裕のある寸止めをしたり、横蹴りを繰り出したり、ボクシングの足運びをしてみたり。
多彩な技で圧倒するチャンジャンの引き出しの多さが同じようなバトル展開が続くなかで中々飽きさせず、シーン毎に違うスタイルの戦い方が見られる面白さがあった。

そんな中、黒龍会から試合の申し出があり、光子のおじさんである船越と戦う事に。
船越の蹴りのフォームがライダーキックみたいで滅茶苦茶綺麗な上に、一発一発にかなりの重みが感じられるアクションは「剛拳」という呼び名に相応しく力強い。
風により視界が妨げられ目隠しをして戦う事になる場面も、一線を越えた達人同士のバトルというものはこんなにも手に汗握るものかと力が入ってしまう名シーンだった。

船越とのバトルのクライマックス感が強過ぎて、藤田との最終決戦が盛り上がりに欠けていた気はしたが、刀対ベルトヌンチャク等面白い変化球もあり最後まで退屈はしなかった。
「私が責任を取る」というまさかのやり切れない結末には「えぇ...」となってしまったが、ジェット・リーのアクションは堪能出来る作品だった。
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