とうじ

ハピネスのとうじのレビュー・感想・評価

ハピネス(1998年製作の映画)
5.0
「マグノリア」はブギーナイツが大当たりして、売れっ子歌手のフィオナアップルと良い感じに付き合いだして、自分の才能に関する自信も自己肯定感もパンパンになっているところに、さらにコカインでアゲアゲになっている天才、PTAが、バラバラなアイデアを、思いつくがまま戯言のように画面上にぶち撒け、それらを一応「群像劇」という枠の中に押し込み、辛うじて映画として成り立たたせるという若気の至りの爆発みたいな映画だったが、それが公開された同時期に、映画界というクラスの端っこで、ジメジメと居座っているただの陰湿な変態のトッドソロンズもまた、同じように、群像劇を作った。
しかしその内容は、近親相姦、変態殺人、異常性欲、小児性愛、自殺、肥満、DV、バラバラ死体、オナ電、メンヘラおじさん、嘔吐、孤独、自己嫌悪、レイプ、熟年離婚、精通、鬱状態。。など、ハードコアな出来事の惑星たちで結び上がる銀河系として、晴れやかな青空とパステルカラーのアメリカ郊外を描く、見る人が誰も幸せにならないような、不必要に過剰なものである。それだけなら、ただの痛い妄想の暴走で止まるものの、これが20世紀に作られた映画の中で一番笑えるコメディに仕上がっているのだがら、本当に奇跡としか言いようがない。
本作がなぜこんなにも抱腹絶倒なのかに関しては、ロジャー・イーバートも自身の評の中で満点を与えながら、意味不明だと言っており、実際、限られた人間にしか刺さらない、刺さらない人には地獄みたいな映画なのだと思う。「不潔でくさいマグノリア」である本作は、とんでもない変態に何かの間違いで、素晴らしい役者陣を雇い、2時間超の映画を作れるだけの予算を与えてしまったような感じが本当にたまらない、大傑作である。
ソロンズ監督は、インタビューで「映画監督は副業。金が十分あれば映画を作るだけ。」と言ってて、この人の本業は本当にただの変態なのだなと確信した。
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