フジタジュンコ

サミュエル・フラーのシャーク!/ザ・シャークのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

3.0
「ジョーズ」以前のサメ映画として著名な本作ですが、内容は沈没船に眠るお宝をめぐってのサスペンスと海洋アドベンチャーです。サメ映画として見ると少々期待はずれかもしれません。

もっとも、フラー自身はサメを撮っているつもりはなく、タイトルも「ケイン」(主人公の名前)だったのを、撮影中にスタントマンがサメに襲われて亡くなったことを存分にプロモーションに活用したかったプロデューサーの思惑により”SHARK!”となったのだとか。

冒頭にがっつりとスタントマンへの謝辞がありますが、フラー的にはずさんな安全対策をとって死者まで出したことに怒り心頭だったとも言われており、そんな事情を反映してかしていないのか、なかなかもったりしていて、時代を考えても出来がいいとは言いづらい仕上がり。とはいえこまっしゃくれた時々残酷な幼い少年と、お若いバート・レイノルズのちぐはぐなバディ関係には癒やされるし、終盤からラストにかけて、緊張感のあるシーンがつづきます。

ちなみに、”shark”には、“他人を食いものにする人、詐欺師”という意味があり、我らがミナミの帝王にも「ローンシャーク 追い込み」(”ローンシャーク=高利貸し”)というサブタイトルの劇場版があります。これに鑑みると本作の「シャーク」というタイトルもなかなか皮肉が効いているように思いました。