B姐さん

セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサーのB姐さんのレビュー・感想・評価

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高校生の時に初めてそのピアノ(たしか「ブルーモンク」か「アスク・ミー・ナウ」)を聞いた時は「なんてヘタクソなんだ」と思った。ビル・エヴァンスが弾く流麗さと違い、たどたどしく、つっかかる感じで弾かれる(叩く)不協和音とそのリズムに違和感さえ持った。これがジャズピアノの巨匠?
それが何年かしたらクセになるとはまさか思わなかった。

セロニアス・モンクの初心者向けドラマではなく、彼の生涯を追った作品でもない。一応どこで生まれて、どういうきっかけで音楽の世界に入って、どうやって一生を終えるかというのはあるがサラッと流される。そういったものにフォーカスしていない。
ほとんどがレコーディングのシーンとかメンバーとの会話とかヨーロッパツアーやライブハウスでのライブシーンとか関係者による少しのエピソードとかそんな感じ。躁鬱病になったエピソードがあったりするが、これまた軽く流す。彼の音楽に与えた影響とかは描かない。そう言う意味でとても親切に作っていない。
でもこれがファンには結構たまらなかったりする。
モンクが喋り、歩き、弾く。ただそこにいる。神話化するのを避けるように存在自体を活写する。出来るだけだけ主観を排したドライな演出な分、過剰なものがなくシンプルなだけ彼の人となりが伝わってくる。生々しい姿が見える。それがいい。

監督はストーンズの『ギミー・シェルター』を撮ったシャーロット・ズウェリン。製作総指揮はクリント・イーストウッド。
そしてタイトルは『ストレート・ノー・チェイサー』。
だから「何も足さなかった」わけだ。

DVD(4/18/2015)
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