猫脳髄

犬神の悪霊(たたり)の猫脳髄のレビュー・感想・評価

犬神の悪霊(たたり)(1977年製作の映画)
3.6
黒沢清「ホラー映画ベスト50」(1993)第40位

何だこの珍品は。「悪霊」を「たたり」と読ませる昭和タイトル。犬神憑きという和製オカルティズムを主要モティーフとしつつ、山村における差別・被差別の実態と、開発による環境破壊そして登場人物たちのロマンス(お色気含む)などを大小取り交ぜたら強烈なごった煮ができあがってしまった。しかもシナリオが前半と後半で手のひら返しになっており、矛盾が解消しないまま突っ走ってしまう。

市川崑「犬神家の一族」(1976)や海外のオカルティズム作品のムーヴメントを受けて製作されたそうだが、犬神憑きに関する描写が丁寧な一方で、大和田伸也(なんだあの顔芸は)はじめ登場人物たちが無茶苦茶な行動で場を乱し、山村が壊滅状態に陥っていく。さらに残り30分で大和田伸也と物の怪の大乱闘がはじまり、力業で違和感をさらっていってしまう。

あとは何といっても、ラストの一大シーンである。監督・脚本の意図をまったく図りかねるが、とにかく大和田がとんでもないド派手な最期を迎えて、これには唖然とするほかない。狂気と人為か、はたまた犬神憑きかと大混乱するが、この(おそらく意図していない)かく乱は、ナ・ホンジン「哭声 コクソン」(2016)が映し出した多義性の先行例と言えなくもない。無茶苦茶ではあるが、嫌いになれない作品。

※東映オンデマンド
猫脳髄

猫脳髄