人類ほかほか計画

吸血鬼ボボラカの人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

吸血鬼ボボラカ(1945年製作の映画)
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マークロブソンによるRKOホラー。ターナーやワイズのコンテ主義っぽいカット割とぜんぜん違った、現場で取り敢えず無難に使える素材いくつか撮っておいて編集室でいい感じのとこ拾って繋ぎました的な、今のハリウッドの凡庸な作品でやられるお手軽手法でもありNHKドラマとかも同じようなやり方で作られてるが、そういうカット割で、ある意味編集技師上がりらしいと言えなくもない。しかし人物の移動/歩行を追うようなショットでしっかりターナーゆずりの映画術をキメてくる感じがあり、特に最後の10分くらいはめちゃくちゃ神がかっていて、構図を切り返す的確さと、暗闇ジャンプカット心霊ギミック的なそれこそ編集で見せるアイデアも投入し本当に怖い美しいシークエンスになってる。



背景的な情報をうんちくっぽく書いておくと……
これはRKOリュートンホラーと言われる作品群の一本。
RKO、『ロッキーホラーショー』主題歌でも怪奇映画へのノスタルジーの象徴として歌われた、『キングコング』で有名なRKOピクチャーズ。
そこのヴァルリュートンというプロデューサーが手がけた低予算怪奇映画群。
ドラキュラやフランケンシュタインで有名なユニバーサルのホラーと対照的な、見せない、想像させる恐怖演出が特徴とされ後のホラー演出に多大な影響を与える。
しかしあまり言われないが実はユニバーサルの1941年『狼男』で見せない話法というのは試みられており(結局会社の意向で変身シーンは挿入される)、その応用、徹底バージョンと言える。
リュートンホラーは全部で6本。
『キャットピープル』『私はゾンビと歩いた』『レオパルドマン』『キャットピープルの呪い』『死体を売る男』『吸血鬼ボボラカ』『恐怖の精神病院』
一発目が『キャットピープル』なことでもわかる通り、やはりユニバーサルに対抗して逆の見せない路線でいったというよりは単純に『狼男』の真似しただけ感がある。
「この手法なら低予算にうってつけやんけ!」みたいな。
で、ジャックターナーという超絶天才監督のうますぎ映画術により『キャットピープル』は『狼男』を超える。
ターナー含めリュートンホラーを手がけた監督は三人。二人目は後の巨匠ロバートワイズ。ワイズは後々リュートン的手法で『たたり』を撮る。
もう一人が後に『大地震』など色々撮るマークロブソン。
ロブソンによるこの『吸血鬼ボボラカ』、「スコセッシが選ぶ最も怖いホラー11本」のひとつに入ってたりする。幻想絵画史上最高傑作とよく言われる有名なベックリン「死の島」をモチーフにした疫病もの。ボリスカーロフかっこいい。