アヴァンタイトルで野宿の若い女が襲われるところ、吸血鬼ジョン・キャラダインに噛まれる前なのに、首に噛み痕のあるカットが堂々とある。そういうレベルの映画である。 『フランケンシュタインの館』(1944)でドラキュラを高貴な佇まいでエレガントに演じたキャラダインだが、ここでは三流の大道芸人の客寄せのような大仰で馬鹿げた芝居で全編を通す。そう言えば『フランケンシュタインの館』のドラキュラは旅の見世物で生き返るのだったが、それでこんな演技を求められたわけでもないだろう。とにかくこの映画の彼の演技は想像を絶する酷さだ。最初から最後まで吸血鬼というより単なるスケベジジイにしか見えない。彼が全キャリアの中で唯一後悔しているというのも頷ける。 同じ吸血鬼西部劇でもこの6年前に作られた佳作『Curse of the Undead』と比べて、あまりに志の低い映画でため息が出るが、ビリー・ザ・キッドが最後に披露するガンプレイには、心臓への木杭の一撃のごとく、世界中の誰もが息が止まり、そして呆れ果てるだろう。 心底酷い映画を見たという満ち足りたこころが残る。ただの酷い映画ではない。必見の酷さだ。