富樫鉄火

乳母車の富樫鉄火のレビュー・感想・評価

乳母車(1956年製作の映画)
4.0
#49 芦川いづみ大会
今回で3〜4回目の鑑賞だが、何回観てもよくできていると感動する。
悪役的なキャラがゼロで、これほど面白いのは、明らかに原作者・石坂洋次郎の、見事な人物設計のおかげ。

特に全員が狭い部屋に揃うクライマックスはたいへんな名場面で、宇野重吉が、ワンカットで、あの複雑な長セリフをこなすのは、映画的眼福で、言葉を失う。
裕次郎もムギちゃんも、あて書きのようなハマり役でよい。
原作は、九品仏で赤ちゃんが行方不明になる騒動の直後で終わりだが、そのあとを、あれだけ延々と創作したシナリオにも驚く。

だがやはり、この映画のキモは、(わが愛する)山根寿子さんの助演女優賞ものの名演技だと思う。
上品と下品の境界線上を、あんなにうまく渡り合えるなんて、ホントにすごいと思う。

昨年、文学散歩で、この作品の舞台(九品仏周辺)を細かく歩いたので、親しみやすかった。
田坂具隆はとにかく長いのだが、これは適度な尺なのも、よかった(それでも2時間だが)。
富樫鉄火

富樫鉄火