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家族日誌の一人旅のレビュー・感想・評価

家族日誌(1962年製作の映画)
3.0
第23回ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞。
ヴァレリオ・ズルリーニ監督作。

幼い頃に母を亡くしたことで、それぞれ別の家庭で育てられた兄・エンリコと弟・ロレンゾの確執と兄弟愛を描いたドラマ。

弟の死の報せを聞いた現在のエンリコの姿から始まり、エンリコの回想というかたちで弟・ロレンゾと過ごした日々を振り返っていく。
弟の出産が原因で命を落とした母。兄・エンリコは祖母に引き取られ貧しい環境の中での生活を余儀なくされる。一方の弟・ロレンゾは貴族の執事に引き取られる。ロレンゾはエンリコとは対照的に裕福だが閉鎖的な環境で育ち、貴族的な慣習を身につけていく。
貧乏だが世知辛い世の中でしぶとく生きていく力を蓄えた兄と、裕福な環境で育てられたが世間慣れしていないため実社会で苦労の絶えない弟。対照的な境遇の兄弟の再会と交流、そして無垢な弟を待ち受ける悲劇を通じて、お互い心の離れていたエンリコとロレンゾの確かな兄弟愛を描き出す。

テーマは悪くないのだが、脚本と演出に起伏が少ないため終始淡々としている印象。弟を襲う悲劇というのも取って付けたかのようにありきたりなもので、このテの感動はちょっと見飽きてるし、急に安っぽく感じられてしまうのが残念。期待していたほどの感動はなく、エンディングも唐突に訪れるため拍子抜けしてしまう。

ただ、エンリコとロレンゾの社会的立場がいつの間にか逆転してしまうシーンや、エンリコに見捨てられた祖母の孤独と孫に対する愛情が示されるシーンは印象深い。兄弟の物語が中心だが『家族日誌(FAMILY DIARY)』というタイトル通り、兄弟それぞれの育て親との関係を交えた家族全体のダイアリーとして物語が進展していく。

主演はイタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニ。終始抑えた演技で笑顔など見せないが、物語が進むにつれ弟を想う気持ちが具体的な行動となって表に現れていく姿が印象に残る。弟・ロレンゾを演じるのは若き日のジャック・ペラン。ジャック・ペランと言えばもちろん『ニュー・シネマ・パラダイス』のトト役であまりにも有名だが、本作は若々し過ぎて少し違和感。何より、黒髪のマストロヤンニと金髪のペランではパッと見兄弟に見えない(年齢も17歳差)。
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