常磐条

サン・ジャックへの道の常磐条のレビュー・感想・評価

サン・ジャックへの道(2005年製作の映画)
4.6
DVDで数年ぶりに再鑑賞。

公開当時、この映画を銀座ルシネマで観た。当時も今もそれほどの頻度で映画館には通えずにいる身分であるため、映画館に観にいく作品は自分にとって思い入れの強い、期待のこもったものが多い。しかしこの作品に関しては一体何に触発されて映画館に足が向いたのか、全くもって覚えていない。「唐突に、思い立って、その日の気分で」出掛けた、そんな記憶がある。確かに当時「好きになりかけていた」ジャンルではあるのだが、、、この巡礼ドラマの鑑賞に向かう一場面が自分にとっても小さな小さな巡礼の旅であったとは、なんとも感慨深い。

物語は、莫大な遺産を相続するため、その条件であるサン・ジャックへの巡礼の旅に出た険悪な間柄の三兄弟と、彼らと共に旅することになる一行の珍道中を描く。皆がそれぞれの人生に悩みを抱えており、それらが旅を続ける中で交差し、光り温かい方へとのびてゆくコメディ・ドラマ。

なかでも個人的に好きなのは、旅に不満を募らせていた三兄弟の長男であるピエールが「もうやめる!」と叫ぶシーン。ピエールが不満を爆発させる姿にガイドのギイが説得するのかと思いきや、彼までもが「私だってやってられんよ!」と言いだして、仕舞いには座り込んで語り出してしまう。そんな二人の背中を呆然と見つめる残りの人々。……なんだか、人間同士がわかりあうってこういうことなんだろうな、と思ってしまう。心理カウンセラーのように悩みを聞いて導いてあげるというのも一つの方法なのだろうが、同じ地べたに座り込んでそれぞれの悩みを打ち明ける、こっちのほうがあったかいじゃないか。。

フランス映画独特の間、カット、言葉と表情によってキャッチボールされる人間模様が心地よい映画でした。
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