櫻イミト

美女のうごめき/鮮血に染まる死霊の館の櫻イミトのレビュー・感想・評価

2.5
フランス吸血鬼映画のカルト監督ジャン・ローランによる4年ぶり6作目の吸血ファンタジー。原題「FASCINATION(魅惑)」。日本DVD題「ジャン・ローランの血の誘い」。※海外映画サイトでは製作1979年。

【あらすじ】
1905年フランスの田舎。貴族女性エヴァ (ブリジット・ラーエ) とエリザベート (フランカ・メイ)は屠殺場に案内され、貧血治癒のために牛の血を飲む。一方、強盗の青年マルクは稼ぎを独り占めし仲間から追われていた。湖畔にある城に逃げ込むと、そこにはエヴァとエリザベートの邸宅だった。彼女たちはマルクを匿う代わりに今夜開かれる貴族女性たちのパーティーまで居てほしいと申し出る。。。

ローラン監督の初めての歴史衣装劇。相変わらず良い雰囲気の城が登場し、貴族女性の衣装も低予算にしてはそれほど安っぽくはない。しかし内容が少々薄くテンポはかなりスローペースで、吸血ファンタジー前5作に比べて数段落ちる印象だった。

吸血鬼シリーズ集大成と言える4年前の「血に濡れた肉唇」(1975)は収支赤字となり、以後のローラン監督はハードコア・ポルノを量産することになった。その間にアイコンだったカステル双子姉妹は去り、また本作にはローラン・ビーチも登場しない。

前年のゾンビ映画「殺戮謝肉祭」(1978)のヒットにより撮ることができたのが本作であり、ローラン監督のフィルモグラフィーとしては同作から第二期に入ったように思える。個人的には、金のためのポルノ量産を通して監督のクリエイティブ精神の何かが変わったのではないかと推察する。

本作で良かったのは、以降の監督作で音楽担当となるフィリップ・ダラムの幻想的な劇伴とジャケ画だった。
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