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春の鐘のotomisanのレビュー・感想・評価

春の鐘(1985年製作の映画)
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 無駄に長いようでいて、ブツ切りにすれば夜の一戦のおつまみに。ともかくこの映画以降、奈良盆地はラブホ激戦。薄墨の夕間暮れ桃色バブルの花盛りに大和し麗し。

 ゴージャスに三田佳子、呆れて去った男への恨み辛みで縋りつくのを祐子は目の当たり。廃れた都の女が焼ぼっ杭佳子を洗い物を川の流れにさらすように置き去ってゆく。近鉄線に流れれば近鉄任せ、欣也に流れれば欣也任せ。

 はずれな男と思い極めて赤膚の里に引っ込む脇で、なにしろ奈良だから鹿だらけ。鐘の音をききながらふと、かつてない何かが脳裏をかすめたなら、徳岡神泉の仔鹿のように、恋を洗い去って生まれ直った自分を知るようなこの花曇り、真白さの虚ろを笑ってしまうだろう。
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