Jeffrey

ブッチャー・ボーイのJeffreyのレビュー・感想・評価

ブッチャー・ボーイ(1997年製作の映画)
3.5
「ブッチャー・ボーイ」

本作はアイルランドを舞台に少年が精神のバランスを崩し、凶行に走る姿をコミニカルに描いたニール・ジョーダン監督の隠れた怪作で、ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いたが、神戸市の連続児童殺傷事件の影響で日本では未公開となったのと、長年VHS止まりだが、一部ソフト化されDVDで再鑑賞したが好きである。この映画は何が優れているかって残酷描写にコミカル、幻想要素を混ぜた点が他に類を見ない。思春期猟奇殺人と簡単に説明できる程単純な物語じゃなくて"何故少年は殺人を犯したのか?"を問う映画でもある。心理の暴走や悪意に満ちた少年に苛立ちを隠せない胸糞悪い作品でもある。

さて物語は、1962年、キューバ危機が世界中に影を落とした時代。だが、もし地球が10億個のカケラになって飛び散ったとしても、フランシーは驚かないだろう。彼にとって成長すると言う事は、それに指摘するほどの大きな衝撃だった。アイルランドで育つ悪がき、フランシー。過酷な運命や問題を抱える家族との生活に翻弄される彼の姿が、時に面白く、時に身を凍らせる恐ろしさで、見事な映像を通して描かれる本作は、ジョーダン監督の最高傑作と称されている。「クライング・ゲーム」(1992年作品)で米アカデミー賞受賞したジョーダン監督「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994年作品)が満を持して配したキャスト陣(スティーヴン・レイん、フィオナ・ショウ、シニード・オコナー)が、フランシーの現実の世界と想像の世界に住む大人たちを演じる。フランシーを演じた新人イーモン・オーウェンズが息を呑むほど素晴らしい、驚愕の演技で観客を圧倒してる。

いゃ〜、久々に見返したけど、かなりユニークで忘れ難く、催眠状態に陥ったような感覚が脳裏を離れない作品である。まず冒頭のラフなミュージックから、アメコミっぽいアニメーションで描いてキャスト紹介をする演出もすごく監督らしく好きだ。そして悪趣味なライトグリーンのスーツに身を包んだ隣人のうるさいおばさんは、「ハリーポッター」のダドリー一家の母親役で日本でも有名だろう。イギリス映画だから結構有名どころの俳優も出ているし、子役たちが川辺で会話するシーンなんて青春映画っぽくてすごく好みだ。ダークファンタジーと言えるかはわからないが、それらのカテゴリーに属すると思う。
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