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花影のIMAOのレビュー・感想・評価

花影(1961年製作の映画)
4.0
大岡昇平原作、菊島隆三脚本、川島雄三監督による文芸作品。
銀座のホステス葉子(池内淳子)は、三年付き合ってきた大学教授の松崎(池辺良)と別れたばかり。ホステスとしては曲がり角の時期だが、昔から好意を持っている骨董美術家(佐野周二)への想いを断ち切れないでいる。その一方で彼女に言いよる男たちも多いのだが、なぜか男に尽くしてしまい損ばかりしてしまう。そんな彼女が選んだ結末は…

川島雄三の映画にはコメディー的な路線と、文芸作品的な路線があり、時にはそれが同居している時もあるが、この作品は明らかに文芸路線。大岡昇平が原作ということもあるだろうが、不思議な重厚感がある。これは川島が撮った『女は二度生まれる』ともちょっと違うアンニュイな雰囲気に満ちているが、池内淳子のこの時期の魅力に依るところが大きいと思う。僕くらいの世代の池内淳子の印象というと「素敵なお母さん」的なものだったが、この映画の中の池内淳子からは(こう言っては失礼かもしれないが)芳醇なフェロモンがスクリーンからダダ漏れしている。大人の色気とはこういうものか?と膝を打った感じでしたが、これはやはりこの女優の「芸」だというべきでしょう。優れた俳優というのはフェロモンの出し入れが自由自在だったりする。今、この良質な色気を放てる女優がいるか?と言われると結構難しいかも。
ストーリーとしては成瀬巳喜男の『女が階段を上る時』を彷彿とさせるし、確かに似てもいるのだけど、ラストを含めた哀愁感はこちらの方が上かもしれない。タイトルのモチーフとなっている後半の花見のシーン、あの池内純子の美しさは忘れがたい。
あと、脇を固める俳優がやはり素晴らしいです。佐野周二の巧さはもちろんだけど、高島忠夫のお坊ちゃんな感じが今まで観てきた彼の芝居の中でピカイチでした^^
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