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座頭市あばれ火祭りのodyssのレビュー・感想・評価

座頭市あばれ火祭り(1970年製作の映画)
3.5
【大原麗子さん登場】

座頭市シリーズ第21作。勝プロダクションの製作。1970年。監督はこのシリーズに何度も登場している三隅研次。

配給が「ダイニチ」となっています。経営危機にあった末期の大映が、同じ状態にあった日活と組んで新たな配給会社を作ったのですが、DVDについている付録(紙の解説書)によるとその効果は皆無だったとか。結局この映画が作られた翌1971年に大映は倒産してしまいます。

本作品は出演者が豪華。各地の親分衆をとりしきり闇将軍とも言われる大親分に森雅之、訳あって妻(吉行和子)を売春婦にしてしまったために、妻を抱いた男を次々と斬り殺している元・旗本に仲代達矢、大親分に言い含められて座頭市に近づきその命を狙う美女に大原麗子、一人前の男になりたいと願い座頭市に近づく若者にピーター。その他、お笑い芸人の正司歌江・玲児など、盛りだくさんです。

しかし、盛りだくさんすぎたせいか、一人一人を十分に活かし切れていないようにも見えます。例えば旗本の若妻でありながら事情があって売りに出される女を演じる吉行和子にはもっと出番を与えたかったところ。それでこそ、妻を抱いた男への復讐心に燃える元・旗本(仲代達矢)の凄みも強調されようというもの。仲代の迫力は十分なのですが、それを支える脚本が足りていない印象です。

大原麗子さんファンの私としては、彼女の登場シーンが多いことには満足できました。最初は市を殺すために近づき、しかし徐々にその人柄に惹かれていって殺意を翻す女の役どころもまあ悪くはありません。このシリーズで大原麗子さんが登場しているのはこの作品だけなんですよね。

しかし、吉行和子と大原麗子という美女ふたりを揃えて、なおかつピーターにまで市に迫る役をやらせるのは、ちょっとやり過ぎ。当時美少年で売っていたピーターですが、さすがに若い美女ふたりの前ではあまり色香を感じません。どうせならこのシリーズの別の作品に起用したほうがよかった。

この映画、大親分(森雅之)も盲目だという設定らしいのですが、見ていて半ば過ぎまでそれに気づきませんでした。どうせなら盲目というハンディが大親分としての権力とつながりを持つよう、脚本をしっかりと作って欲しかった。脚本が弱いと思うのは、その辺にも理由があります。

というわけで、役者は豪華ながら脚本は見劣りがする結果となりました。が、大原麗子さんファンの私なので、点数は甘めにします(笑)。
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