ななし

ベン・ハーのななしのレビュー・感想・評価

ベン・ハー(1959年製作の映画)
4.5
古典的名作&200分超えの巨編ということで、鑑賞前は身構えていたがはじまってみると王道の貴種流離譚で大変に観やすい。

ローマ帝国に征服されたユダヤ人の青年、ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)は親友である帝国の司令官・メッサラ(スティーヴン・ボイド)に裏切られてしまい故郷を追放、罪人としてガレー船の漕ぎ手の身分に落とされてしまう。

しかし、ローマ帝国とマケドニアの海戦のさなか、船から投げ出された海軍司令官のアリウス(ジャック・ホーキンス)を救出したことがきっかけで、ベン・ハーは恩赦を受け、アリウスの養子となる。その後、ベン・ハーは故郷へと帰還、そのとき戦車競走に因縁の敵であるメッサラが出場することを知る。虜囚の身となった母と妹の居所を知り、メッサラに復讐するために、彼は4匹の馬が引く馬車を狩り、レースへと挑む、という筋立て。

これだけでもじゅうぶんにおもしろい歴史ものなのだが、特筆すべきはベン・ハーの行く先々で、ナザレのイエスの人生が交錯すること。囚人として飢えと乾きのなかで行進するなかで、水を与えてくれる謎の青年はいつしか新たな預言者となり、ユダヤの人びとの支持を集めていく。映画のラスト、業病にかかった母と妹に対してゴルゴダの丘にひかれるイエスはベン・ハーの目の前で”奇跡”を与える。叙事詩が最期の最期で宗教映画へとお結実する。特異ながら、印象的なラストだ。
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