中村優一

ベン・ハーの中村優一のレビュー・感想・評価

ベン・ハー(1959年製作の映画)
4.8
子供の頃にテレビで見た記憶があったのですが、最近「名作映画で読み解く世界史」という本を読んで、そこに一押しで紹介されていたので、改めて鑑賞してみました。これすごい映画です!

戦車競走の記憶しかなくて、しかも結構長かったので眠かった印象があったのですが、物語としては、あざやかな復讐劇だし、才能を活かした立身出世の話だし、冒険活劇としても充分面白い上に、ローマ全盛時代の時代背景がよく分かったり、なんといっても並行してイエスの誕生と十字架までがリンクしているのに驚きました。

子供の頃よりは、ローマの歴史、宗教の意味などがわかってから見た方が、いろいろ興味深く観られてよかったです。ガレー船の戦闘など、時代はちょっと違いますが、アサシン クリード オデッセイでプレイしたそのままだ!と、結構感動しました。

この映画、主人公は確かにベン・ハーなのですが、決してベン・ハーすごい!って一概にならないお話の展開が深いです。ローマ統治全盛の時代に、なぜユダヤの民はあそこまで頑ななのか、ローマって結構緩い統治していたので、ちょっと従ってればそんなに悪いことにならないのに、なぜそこまで抵抗するのかなど、ベン・ハーもそれにもれず、かなり優遇されているのに決して従わない点が微妙でした。そのせいでいろんな困難を自ら呼び寄せてしまいます。ちょっと考えると、それって自分のせいじゃんと思ってしまいがちです。ただ、宗教的、民族的なアイデンティティはそういうものじゃ無いんでしょうね。この同時代にイエスが誕生しており、ベン・ハーとは違うやり方で人々の心を捉えていきます。ベン・ハーも、早くその教えを聞いていれば、きっと違う人生だったんだろうと思わずにはいられない展開でした。

この映画、戦車競走で勝利を収めてバンザーイ!で終わっていたと思っていたのですが、その後の展開の方が深かったです。多分に宗教色が強いのですが、もしかして、この部分を本当は強調したかったのかなとも思いました。

ともかく、全編長いのですが、展開が早くて飽きずに観られますし、歴史をちょっと知っていれば様々な気付きがありますし、デジタルリマスターのおかげで決してい古くさくないし、なんといっても、あれだけの強烈なシーンをCGなしで撮っている迫力を感じられるし、ぜひとも一度は観るべき映画だと思います。お薦めです!
中村優一

中村優一